秋は右肩痛で登板なしも…ドラ3・鈴木豪太をなぜ指名? 球団が口にした「独自の調査」

指名挨拶を受けた鈴木豪太【写真:竹村岳】
指名挨拶を受けた鈴木豪太【写真:竹村岳】

大学1年の5月からサイドスローに転向…きっかけとなった一言

 類まれなる能力を秘めた22歳だ。評価されたのは「精神性の高さ」。ソフトバンクは29日、ドラフト3位の鈴木豪太投手(大商大)に指名あいさつを行った。サイドスローから繰り出す直球は最速147キロを誇る右腕。「毎日投げられるタフさが自分の売りなので。どんなところでもゼロで抑えていきたい」。同席した福山龍太郎アマスカウトチーフ、稲嶺誉担当スカウトの言葉から、右腕を指名した背景を紐解いた。

 滋賀県長浜市出身。静岡の東海大翔洋高、大商大を経て3位指名を受けた。サイドスローに転向したのは、大学1年の5月。「僕は上背もなかった(身長175センチ)ですし、同じタイプのピッチャーが他にもいた。生きていく道がそこなのかなと思いました」。当時の監督からの「横でやってみいひんか」という言葉がきっかけとなった。反復練習の末、めきめきと力をつけ、主戦投手に成長。今春のリーグ戦では8試合に登板して55回1/3を投げるなど、タフネスぶりを発揮してきた。

 福山スカウトは右腕を「どちらかといえばクセ球ですね。見えづらさもあるので」と表現する。巨人の大勢投手を彷彿とさせるような、噴き上がる直球が代名詞だ。今秋のリーグ戦では登板がなかったものの、それでも指名に至ったのはスカウト陣の脳裏に強烈なインパクトが刻まれていたからだ。

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続きの内容は

スカウトが明かす、鈴木豪太の「高い精神性」の真価とは
プロで通用する、鈴木豪太の「貴重な能力」の正体とは
鈴木豪太が自信を見せる、独自の「投球スタイル」の秘密

福山&稲嶺スカウトが語った評価の中身

「自分のボールを投げ続けられる精神的な強さ。気持ちが入って、感情的にあっちこっちに投げてしまう投手は結構いるんですけど。そういったところの高い精神性というんですかね。マウンド度胸がある。連投しても、完投しても、崩れない。こういうのって、なかなか教えてもできないセンスですから。そこも評価しています」

 今春のリーグ戦で見せた2試合連続完投。2戦目は勝てば優勝、負ければV逸という状況で自ら先発を直訴した。見事1失点に抑え、チームは7連覇を達成。緊張のあまり、自分を見失うようなことは絶対にない。大舞台で力を発揮できる能力があることを、ホークスのスカウト陣は評価してきた。秋は右肩痛に苦しんだが、福山スカウトは「独自の調査で、そこは全く問題ないと我々は判断しています。即戦力として楽しみにしています」ときっぱり言い切った。

 自他ともにスタミナ面が売りだと認める。大学2年の時から右腕を見守ってきた稲嶺スカウトも、“後付け”では得られない貴重な能力を秘めていると語る。「プロに入ってから、球速っていうのは上げられるんです。トレーニングをしっかりと積み重ねればいいわけですから。でも、スタミナっていうのはなかなか付かないんですよ。アマチュアの時にどれだけ投げてきたのかは、我々としても重要視するポイントです」。プロの世界は143試合の長丁場。入団が実現すれば、きっとフル回転で投手陣を助けてくれるはずだ。

制球力の良さを自負「そういうところも売り」

 培ってきた能力に、鈴木本人も自信をのぞかせる。「コントロールもいい方だと思います。フォアボールも少ないですし、そういうところも売りにしていきたいです」。野球を始めた時からピッチャーを務めていたが、中学時代の主なポジションは捕手だった。投手への返球やバント処理など、身に染み付いた短い距離のスローイングが今につながっている。かけがえのないものを得た大学での4年間。鈴木は言葉に力を込める。

「滋賀出身で、関西の方で生まれ育ったので。関西の強い大学で勝負したいなという思いがあって、大阪商業大学を選択させていただきました。強みはストレートで、軌道も普通のピッチャーとは違いますし。伸び上がってきてバッターを詰まらせたりするのが僕の売りなので。そこにはすごく自信があります」

 九州遠征で1度、福岡を訪れたこともある。その時はもつ鍋を食べたそうだ。「ぜひもう1回食べたいですけど、太りはしないように。食べ過ぎず、楽しみながら野球を頑張りたいです」。大舞台で見せつけてきたメンタル面の強さ。みずほPayPayドームのマウンドで躍動する姿を早く見たい。

(竹村岳 / Gaku Takemura)