「お前は悪くない」から5年…川瀬晃に抱いた思い 柳田悠岐があらためて感じた“強さ”

5回2死満塁、川瀬晃を見つめる柳田悠岐【写真:加治屋友輝】
5回2死満塁、川瀬晃を見つめる柳田悠岐【写真:加治屋友輝】

2020年8月11日のお立ち台…柳田から川瀬に「お前は悪くない」

 大激戦を終えて、大黒柱は汗を拭った。「いっぱい試合ができたので、よかったんじゃないですか」。日本ハムとのクライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージを制し、柳田悠岐外野手は笑顔で振り返った。“語り草”となっている「あのお立ち台」から5年。逞しくなった川瀬晃内野手に、厚い信頼を寄せた。

 アドバンテージも含めて3勝3敗で迎えた20日の大一番。ナインが一丸となり、1点差で勝利をもぎ取った。決勝打が生まれたのは同点で迎えた5回。2死満塁で川瀬が右前適時打を放ち、最後までリードを守り切った。柳田も全6試合でスタメン出場。第2戦となった16日には先制3ランを放つなど、抜群の存在感を示しながらチームを牽引した。

 柳田と川瀬といえば、思い出すのは5年前。2020年8月11日のオリックス戦(みずほPayPayドーム)での一コマだ。エースの千賀滉大が先発した試合で背番号9は2本塁打5打点の大活躍。6回に逆転3ランを放つと、大量失点につながる2失策を喫していた川瀬の頭をポンポンと叩いた。ヒーローインタビューでは「お前は悪くない。千賀が悪いんだと言いました」。実に柳田らしい言葉で、後輩のミスを帳消しにしてみせた。

 5年の月日が経ち、プロ10年目を迎えた川瀬。5月2日のロッテ戦(みずほPayPayドーム)ではサヨナラ打を放つなど、ホークスには欠かせない存在にまで成長した。日本シリーズ進出を決める一打を放った28歳に対し、柳田は端的な言葉で賛辞を送った。

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続きの内容は

・柳田が語る川瀬への「真の信頼」とは
・小久保監督が川瀬に贈った「最高の賛辞」
・柳田が実感した「ホークスの強さ」の源

試合後の会見では小久保裕紀監督も大絶賛

「マジでナイスって思いましたね」。スタメンでもベンチスタートでも、変わることなく徹底的な準備を貫いてきた。そんな川瀬の姿を当然、柳田もよく理解している。「決勝打も、普段の練習から丁寧にやっているからこそ生まれたのか」との問いに「そりゃそうでしょう。そうですよ」と繰り返して強調した。

 レギュラーシーズンで川瀬は102試合に出場。その中でスタメン起用は48試合だった。大一番を託した小久保裕紀監督も最敬礼する。「怪我人が多い中で、いろんな役割で1軍にい続けた。そういう選手が最後に打ったっていうのはね。今年は5月2日のサヨナラヒットもありましたけど、本当に節目でいい活躍が目立った。そういうシーズンだったんじゃないですか」。その勝負強さで、チームを何度も救ってきた背番号0を称えた。

「もうホークスにいなくてはならない存在。替えの効かない選手です」。激闘を制したからこそ、小久保監督の褒め言葉は重く響く。さらに指揮官は川瀬について「スーパーサブ……」と切り出したが、すぐに「スーパーサブ以上ですね」と“上方修正”して言い直していた。

遊ゴロをさばいてガッツポーズする川瀬晃【写真:加治屋友輝】
遊ゴロをさばいてガッツポーズする川瀬晃【写真:加治屋友輝】

日本ハムとの激闘を終えて…柳田悠岐が感じたこと

 日本ハムとの対戦成績はレギュラーシーズンで13勝12敗。五角の戦いを演じたライバルとのCSも第6戦までもつれこみ、敗れれば今季が終わるという状況だった。2022年から2年間キャプテンも務め、ナインを引っ張ってきた柳田にとっても、あらためて“ホークスの強さ”を実感する一戦となった。

「チームなので、自分がダメでも誰かが助けてくれることもある。だから、みんなもそんなにプレッシャーを感じていないと思います」

 ここぞの試合で一丸となり、勝負強さを発揮する。先輩たちが作り上げてきたチームリーダーの意思は、しっかりと川瀬にも受け継がれている。目指すのは5年ぶりの日本一だけ。阪神との頂上決戦でも、最後までホークスらしさを貫くはずだ。

(竹村岳 / Gaku Takemura)