ルーキーイヤーは26試合に出場
激しい優勝争いを繰り広げたチームの中で、ドラフト2位ルーキー・庄子雄大内野手が確かな成長を見せた。シーズン最終盤の3日、本拠地みずほPayPayドームで行われたオリックス戦で左翼線への二塁打をマーク。プロ初打点を記録した9月28日の西武戦で放った二塁打に続き、1軍の舞台でしっかりと存在感を示した。
1年目から1軍と2軍を行き来し、プロの壁も経験した。しかし、シーズン最終盤で見せたプレーは、春先とは明らかに違う“輝き”を放っていた。短期間で見せた飛躍的な成長。その裏には、首脳陣も目を細めるほどの「準備力」があった。1年間の歩みに迫る。
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続きの内容は
・首脳陣が語る、庄子の成長の「最大の要因」とは
・庄子が明かす、優勝時に心に灯った「新たな火」
・ルーキー庄子が誓う「強い決意」の言葉とは
「まだまだ成長途中ではあると思いますが、終盤にかけてようやく1軍で通用する部分が少しずつ見えてきました。守備の面でもバッティングの面でもすごく良い形でレギュラーシーズンを終えられた。自分にとって1年間かけて成長した、というところが見えたシーズンだったと思います」
プロの水に慣れるのに必死だった。序盤は課題が浮き彫りになり、中でも攻守における“スピード”に苦戦した。がむしゃらにレベルアップすることだけを考え、目の前の練習に日々取り組んできた。
実を結び始めたのは、シーズン終盤だった。「(首脳陣から)『格段に守備が良くなっている』とは言っていただけたので。そこはすごく自信になりましたし、自分でも実感している部分があります。まだまだだなと思うところもありますが、すごくレベルアップしたと感じます」。7月26日に1軍に再昇格してからはシーズン終了まで帯同した。出場は26試合だったが、かけがえのない時間を過ごしたことが、確かな自信となった。
首脳陣が評価したポイント
その成長を、奈良原浩ヘッドコーチは誰よりも高く評価していた。「すごいね、スピードも守備も。あれだけ打席に立っていなくても、ピッチャーに対応できている」と目を細める。特に守備面での進化は著しく、「本多(雄一内野守備走塁兼作戦)コーチがつきっきりでやっているからスピードも速くなった。試合でああいうプレーができることが、だんだん自信になってきている」と分析。首脳陣の間でも「これぐらい守れるのであれば、困った時にいける」という信頼が生まれているという。
ルーキーながら、なぜこれほどまでの信頼を得ることができたのか。その核心を、奈良原ヘッドコーチは「準備」という言葉で表現する。庄子が常に意識し続けていた1軍の戦いを見据えた日々の鍛錬こそが、終盤の猛アピールを可能にした最大の要因だった。
「チャンスがポンっと来て、すぐに結果を出せるわけではない。その前の準備があったからチャンスを掴めた。2軍にいる時に、いかに1軍を想定してやれていたかですよね。そう考えたら、庄子は終盤の優勝が決まってからにはなったけど、試合に出た時に結果を残した。その準備をしていたっていう評価になりますよね」。常に1軍で通用するプレーをイメージしていたルーキーの姿勢をコーチ陣は見逃さなかった。
自身の成長を実感し、首脳陣からの信頼も高まりつつある庄子。初めて経験した優勝の瞬間やセレモニーは、心に新たな火を灯した。「やはり先輩方の力でその場にいられたという思いが一番強いです。『自分の力で優勝に貢献した』と周りから言ってもらえるような選手になりたいと、改めて強く思いました」。謙虚な言葉の中ににじむ強い決意。シーズン終了まで庄子が1軍にいた理由が、この言葉に詰まっていた。
「最後は1軍にずっといられたことで、リーグ優勝を経験できましたし、すごく良い経験をさせてもらったなと思っています」。クライマックスシリーズ、そして日本シリーズまで駆け抜ける。庄子はもう欠かせない存在だ。
(飯田航平 / Kohei Iida)