タイトル獲得のためだけじゃない 「すごくいい機会」首脳陣にあった杉山一樹の8回途中投入の意図

8回途中に倉野コーチからブルペンへ入った連絡「2人出たら行くよ」
初のタイトル獲得のために突如として訪れた登板だった。ホークスが5-2で勝利した5日のロッテ戦(ZOZOマリン)。4点リードで迎えた8回2死一、三塁のピンチで、マウンドに上がったのは守護神・杉山一樹投手だった。
杉山はこの試合前の時点で30セーブ。タイトルを争う西武の平良とは、わずか1差だった。自身初の栄冠を手にするには、シーズン最終戦となるこの試合でセーブをマークする必要があった。そのためには、3点差以内のリードで1イニング以上を投げるか、2者連続本塁打を浴びると同点または逆転される場面での登板が条件だった。
5-1で迎えた8回、3番手の上茶谷大河投手が登板した。右腕は先頭を空振り三振に仕留めたが、続く高部に右中間への三塁打を浴びる。その後2死となったが、ソト内野手に四球を与え、2死一、三塁となった。図らずもセーブがつく条件が整った。
この回の途中、ブルペンの杉山に倉野信次投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター(投手)から連絡が入っていた。
「ランナーが2人出たら行くよ」
杉山が8回途中から“回またぎ”で試合を締めくくれば、31セーブ目が記録される。4点差のまま9回を迎えてしまえば、その機会は訪れない可能性もあった。小久保裕紀監督と倉野コーチの間では、事前の打ち合わせで“回またぎ”は想定済みだった。セーブが付く条件が整い、迷うことなく守護神投入のカードを切った。
杉山は藤岡に右前適時打を浴びて1点を失ったものの、続く山口を空振り三振に仕留めてピンチを脱出。9回は死球こそ与えたが、無失点に抑えてリードを守り切り、首脳陣の期待通りに初のタイトルを確定させた。
ただ、首脳陣がこの場面で守護神を送り出したのには、タイトル獲得の先にある“頂”を見据えたもう1つの“明確な狙い”が存在した。
会員になると続きをご覧いただけます
続きの内容は
・倉野コーチが明かした、杉山のポストシーズンでの「特別な起用法」
・日本一奪還への布石。この登板に隠された「もう一つの意味」とは
(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)