昨季は叶わなかったCS出場 開幕マスク→右翼起用…怒涛のシーズンで谷川原が微笑む“癒しの仕草”

谷川原健太【写真:古川剛伊】
谷川原健太【写真:古川剛伊】

「試合に出られるのは幸せ」

 表情からは苦しいシーズンを戦い抜いた充実感が垣間見えた。3月28日、ロッテとの開幕戦(みずほPayPayドーム)で、スタメンマスクを被ったのが谷川原健太捕手だった。そこから半年、任されるポジションは大きく変わった。

「久々に感じた気持ちでした。試合に出られるっていうのは幸せだなって思いましたし、楽しかったです」。優勝マジックを「1」に減らした26日の楽天戦(楽天モバイルパーク)では、8回から守備固めとして右翼に就いた。1点差を守りに入った首脳陣の意図が見える中、緊張を認めつつも、その顔は充実感に満ちていた。

 開幕からわずか10日後の4月7日、出場選手登録を抹消された。順風満帆な滑り出しに見えたシーズンだったが、すぐに壁にぶつかった。そこから約3か月、ファームでの再調整を余儀なくされた。「最初はやっぱり気が沈んでいた時もあった」。苦しい時期を谷川原はいかにして乗り越えたのか――。そこには何にも代えられない存在の「支え」があった。

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続きの内容は

・谷川原選手が明かす、苦悩を乗り越えた「意外な支え」とは
・開幕マスクから右翼へ…激動のシーズンで得た「新たな境地」
・昨季叶わなかったCS出場、背番号45が誓う「特別な決意」

一番の癒しは…「目をパチパチ」

「子どものためにっていうのもそうですけど、妻には『2軍』って言われた日に、すごく励ましの言葉をもらいました。『これは頑張らないとな』っていうのはあって、それがあったからこそ腐らずにここまでやってこられたっていうのはあります」 

 最大の原動力となったのが家族の存在だ。昨年の大晦日に誕生したばかりの長男、そして妻の支えは何よりも心強かった。妻からかけられた言葉は今でも大切に胸の中にある。「覚えてます。だけど言えないです」。そうはにかむ表情に、夫婦の絆の深さがうかがえた。

 ナイターを終えて帰宅すると、愛息はすでに夢の中。「寝顔を見たら癒されます。でも一番癒されるのは、朝起きてポツンと1人で座っている時に、目をパチパチしたりしている時ですね」。愛する家族の存在が、谷川原の心を何度でも奮い立たせた。

昨季は叶わなかったCS出場

 6月に再昇格を果たすと、9月からは新たな役割が与えられた。右翼の守備だ。開幕マスクを被った捕手が、シーズン終盤に外野の守備固めを任されるのは珍しい。それでも、「与えられたポジションをやるっていうので、ライトの守備自体もちょっと慣れてきたので。そこはもう問題なくできています。与えられた役割にすんなり入れているのかなっていうのはあります」。戸惑いを見せることなく、チームの勝利に貢献した。

 激動のシーズンを経て、チームはクライマックスシリーズ(CS)へと駒を進める。昨年は「みやざきフェニックス・リーグ」に参加していた際に、相手チームの選手が投げたボールが谷川原の右側頭部を直撃。「頬骨基部(側頭骨側)骨折」を負った影響もあり、ポストシーズンのベンチ入りは叶わなかった。

「今の時期にアピールして、今年はしっかり(メンバーに)入ってチームに貢献できるように。そして日本一になれるように頑張っていきたいです」。この1年で様々な苦しみを知った背番号45。短期決戦の舞台で最高の輝きを放つ準備を進めていく。

(飯田航平 / Kohei Iida)