柳田悠岐から「好きに飲んで食って」 野手全員と食事へ…2軍に残した“貴重な財産”

2軍戦の声出しに参加する柳田悠岐【写真:竹村岳】
2軍戦の声出しに参加する柳田悠岐【写真:竹村岳】

22日に1軍合流「野球できる喜びが一番です」

 一流の背中をしっかりと後輩に示したうえで、約5か月半ぶりに1軍の舞台へ戻ってきた。2軍で過ごした3週間。復活を目指す日々の中で、「野手全員」を連れて食事会に出掛けていた。

 柳田悠岐外野手が22日、1軍合流を果たした。4月11日のロッテ戦(ZOZOマリン)で右足に自打球を受けて途中交代。右脛骨の骨挫傷と診断され、リハビリ組に移行した。予期せぬ形での長期離脱。8月29日の2軍戦で4か月ぶりの実戦復帰を果たすと、一歩ずつ段階を踏んできた。「野球ができる喜びが一番です」。今月19日のウエスタン・阪神戦(タマスタ筑後)では左翼守備に就き、1軍復帰は秒読み段階へと入った。

 リハビリの意味合いがあったとはいえ、球界を代表するスターが2軍で3週間の時間を過ごした。共に過ごした若鷹にどんな影響を与えたのか。秋広優人内野手、大友宗捕手、山下恭吾内野手、廣瀬隆太内野手の4人に聞いてみた。複数の証言から明かされたのは、後輩たちを連れて開催された関西での“柳田会”の様子だった。

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続きの内容は

・秋広選手が語る中田翔との意外な共通点
・柳田選手が若鷹に逆質問した「深い理由」
・ギータが若鷹に与えた「特別な言葉」

秋広優人なりに感じた中田翔との共通点とは

 2軍は9月2日からウエスタン・阪神戦(日鉄鋼板SGLスタジアム)のため関西に向かった。柳田にとっては4か月半ぶりの遠征。事前に野手陣へ「この日を空けておいて」と通達していた。「ちょっとこじんまりとしたお店だったんですけど。(店に)来た順で、どんどん席が埋まっていった感じです」。そう口にしたのは、今季から加入した秋広だ。焼肉を味わいながら、ギータとの親睦を深めたという。

「すごく楽しい会になりましたね。柳田さんから『好きに飲んで食って』みたいな感じで。なかなか全員で食事することはないので、いろんな話もできましたし。食事の時にしかできない話もあるんで。球場とはまた違った会話をできたのかなと思います」

 今年の5月に巨人からトレード移籍した秋広。巨人時代から柳田とは面識があり、今年2月の春季キャンプ中には坂本勇人内野手らとともに食事にも出かけた。チームメートとして過ごした3週間は、2人の関係性をさらに深くした。「あれほどの数字を残している選手がすごく声を出す。周りを巻き込んで楽しい雰囲気にしてくれるし、やりやすい環境を作ってくれました。ガチガチな緊張感とかではなくて、一緒に楽しくできたと思いますね」。

 秋広はプロ1年目のオフから、中日の中田翔内野手と自主トレを重ねてきた。柳田と日々を過ごして感じたのは、中田との類似点だった。「(2人とも)人が寄ってくるというか、自然と輪ができますよね。10歳以上も離れた後輩に対しても、そうやって接してくれるので」。そして意外な共通点は、“外食の時間”を大切にしていることだ。

「こっちに来る前から柳田さんのことは知っていたんですけど、食事に誘ってもらったことがよかったです。翔さんもそうなんですけど、外食だったり、球場以外で話をする時間を大事にしていたので。やっぱりそこでしか話せない、そこでしか聞けない話がある。そういう意味でも、食事に連れていってもらったのはすごくありがたいことですし、色んな話を聞けるすごく良い機会だった。そこは僕も翔さんに教わったところで、大事にしたいなと思いました」

秋広優人と柳田悠岐【写真:竹村岳】
秋広優人と柳田悠岐【写真:竹村岳】

26歳のオールドルーキーには自ら“逆質問”も

 プロ1年目の大友は「一言でいうと、すごくいい大人。野球以外の部分も含めて、参考にしたいところばかりでした。頼りになるし、驕りがない。人としての魅力を感じました」と笑顔で振り返る。「自分から明るさ、エネルギーを発するような人ですよね」。秋広と同じく、気が付けば柳田の人柄に惹かれていた。

 大友は日本通運という大企業を退社し、独立リーグでのプレーを選択した異色のキャリアの持ち主。1999年世代のオールドルーキーだ。関西で開催された“柳田会”でも「いろんな話をしましたし、柳田さんから『どういう環境でやってたん?』って聞かれたり。分け隔てがなくて、積極的に声をかけてもらいました」と感謝は尽きない。「すごく勉強になりました」と感服しきりだった。

 育成の山下は久留米市で育ち、福岡大大濠高を経てホークスに入団した。「プロに入る前は普通に『ギータ』って呼んでいました。小さい頃から見ていたので」と、ファン目線で追いかける存在だった。2軍でプレーをともにし「単純に、いい人です。誰と話すにしても壁がないし、飾らないじゃないですか」とうなずく。

 柳田とは16歳差だが、「恭吾」と下の名前で呼ばれていたそう。実感したのは「意外と見てくれている」ということだ。山下は主に二遊間を守る内野手。外野手であるギータとの接点は決して多くはないが「僕と高田(知季内野守備走塁)コーチと3人で話をしている時に『こいつ守備上手いよね』って。柳田さんは外野手ですけど、そんなところまで見てくれていることは嬉しかったです」とはにかんだ。

 下の名前で呼ばれる若鷹も多い中、廣瀬の呼ばれ方は「りゅうくん」。プロ2年目で、柳田と3週間もの時間を過ごしたのは初めてだった。「根から明るい方でしたね。貴重な経験だと思うし、(食事に)誘っていただいたのもありがたかったです」と頭を下げる。貴重な財産をファームに残し、柳田悠岐が1軍に戻ってきた。リーグ連覇に向けて、いざラストスパートだ。

(竹村岳 / Gaku Takemura)