無念の降板も「感謝しかない」 大関が松本晴に託した思い…好リリーフ生んだ“2人の時間”

松本晴【写真:小池義弘】
松本晴【写真:小池義弘】

無死一、二塁を無失点に凌ぐ好投

 最高の火消しが逆転勝利に結びついた。18日にみずほPayPayドームで行われた日本ハムとの直接対決。大事な一戦は序盤から大きく動いた。チ-ムの勝ち頭である大関友久投手が3回に連打を浴びて無死一、二塁のピンチを招くと、小久保裕紀監督は早々の継投を決断した。1-1の緊迫した場面でマウンドに上がったのが、先発から“配置転換”になったばかりの松本晴投手だった。

 力強く左腕を振った。万波から空振り三振を奪うと、続く山縣を二ゴロ併殺に仕留める完璧な投球でチームの窮地を救った。試合後に「きょうはモヤモヤがちょっと晴れたような感じがします」と語った松本晴。この好リリーフの裏側には、自身に寄り添ってくれた大関の存在があった。マウンドを降りる背番号47から託された思い――。そして松本晴が新たに掴んだ手応えを語った。

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続きの内容は

・“モヤモヤ”を解消した大関投手の「言葉」
・吹っ切れたピッチングで掴んだ「手応え」
・大関投手が託した「悔しさと感謝」の真意

「以前と違うのは、全体的な試合の流れを見るというよりも、(打者)1人1人との勝負を楽しめるようになったこと。1人1人の勝負を最高の物にするという考え方になると、余計なことを考えなくなるので。自分のピッチングよりも、勝負にもっと目を向けるという感じです」

 こう語る松本晴は、なぜこれほどまでに吹っ切れた投球ができたのか。そこにはマウンドを降りた先輩左腕との濃密な時間がった。「少しモヤモヤしている部分もあったので。なぜそうなのか、どういった考え方がより良いパフォーマンスに繋げられるかっていうところを模索していた」。そんな松本晴の心に寄り添ったのが大関だった。

「練習中とか、球場の外でご飯に行かせてもらったり、話をすごくしてもらって。一方的に話されるというより、僕の考えを話して、それをまとめてアドバイスをくれる感じです」。抱えていたものを解きほぐすように対話を重ねたという。

大関が託した思い…「感謝しかない」

 ピンチの場面でマウンドを託した大関も「普通に食事へ行ったり、一緒にカフェに行ったりとか。野球の話にもなりますし、野球以外の話もします。(松本)晴にとって、いい時間になってくれていたのであれば、嬉しいです」と、2人の時間を振り返る。

 この日、マウンドを降りた大関はベンチ前で松本晴を待ち、軽くタッチした。「ああいう展開でランナーを残したまま代わる形にもなりましたし……。晴だったからというわけではないですが、悔しいですけど、気持ちを託すという感じでした」。その思いを背番号49が、最高の形で結果につなげた。

「本当に感謝しかないです。晴が試合を落ち着かせてくれて、チームの逆転に繋がったと思うので。ランナーが返っていたら、試合はかなり苦しくなったでしょうし、僕のきょうの状態だったら抑えるのが難しかったかもしれないので……。本当に晴に感謝したいです」

ピンチを凌いだ松本晴と大関友久【写真:小池義弘】
ピンチを凌いだ松本晴と大関友久【写真:小池義弘】

失点以上の価値…「いい失敗の仕方」

 松本晴は4回に適時打を浴びて1点を失ったが、下を向かなかった。「すごく集中もできていましたし、これまでの失点とはまた少し違う感じです。もちろん反省はしているんですけど、いい失敗の仕方というか」。ベストを尽くし、勝負に徹することができたからこそ口に出せる言葉。1失点を喫したこと以上に、3回の完璧な火消しがチームに与えた勢いは計り知れなかった。

「こういう時期に優勝争いをしている相手と対戦できることは、すごく幸せなことです」。この日の1球1球は、松本晴を投手として一回り大きくさせたに違いない。チームは逆転勝利を収め、マジックは「7」に。優勝争い真っ只中の終盤戦で、松本晴が大きな輝きを放った一夜だった。

(飯田航平 / Kohei Iida)