藤田悠太郎の涙…目を赤くした18失点の大敗 試合後に問われた「どういう悔しさだ?」

藤田悠太郎【写真:竹村岳】
藤田悠太郎【写真:竹村岳】

9日のウエスタン・中日戦は18失点の大敗

 目を赤くして、涙を堪えていた。扇の要として、屈辱の18失点。大敗の試合後、藤田悠太郎捕手は沈んだ表情でバスへと乗り込んだ。「自分がやりたいようにできなかったので、すごく悔しかったです」。

 ウエスタン・リーグ3連覇を目指す2軍は9日から1差に迫られた2位・中日との直接対決を戦った。藤田悠は初戦の先発マスクを託されたが、7回に途中交代するまで3投手をリードして17点を失った。試合後、バッテリーミーティングに松山秀明2軍監督が参加。厳しい表情で「ピッチャーだけの責任じゃない」と訴えていた。

 3日の阪神戦(日鉄鋼板SGLスタジアム)から始まった5連敗。この間、5試合で52失点だった。連敗初日の先発マスクも藤田悠だった。“投壊”を20歳の若鷹はどのように受け止めたのか。

厳しく指摘されたのは試合中の“態度”

「表情だったり態度に出てしまったりしていたので。そこは、まだまだ僕の未熟なところだと思いました。細川(亨)コーチからも『そういう試合もあるけど、キャッチャーがやって(態度に出して)はいけない』と言われたので。試合をやっているのは僕だけじゃないですし、周りに迷惑をかけないようにしないといけないです」

 試合中になかなか切り替えができなかったと冷静に振り返る。「いつも言われるんですけど……。僕の場合は下を向いちゃったり、考え込んでしまう。チームに目を向けられるようにならないといけないです」と言い聞かせるように話した。9日の中日戦。5回1死二塁では、岩崎峻典投手への返球が悪送球になり二走が三進(記録は藤田悠の失策)。直後にタイムリーを許すなど、自らのミスも失点に直結した。勝つためには、細かいところまで徹底しなければならない。そう痛感させられる試合となった。

 細川コーチは「試合中から(態度に)出てしまっていたし、悔しさがにじみ出ていましたよね」と振り返る。落ち込んでいても、試合は進んでいく。反省するのは全てが終わった後でいいと、捕手陣には伝え続けてきた。3時間19分の一戦を終えて、藤田悠に問いかけたのは「それはどういう悔しさだ?」。その答えに、背番号65の現在地が詰まっていた。

「抑えた、抑えられなかったじゃなくて、首を振られる回数が多くて打たれたこと。そこは自分のコミュニケーション不足だし、『悔しいです』と受け止めていました。積み上げていくしかないし、その部分はもう『投手と捕手というよりも人間と人間だよ』っていう話をしましたね。試合の真っ最中も、抑えたり打たれたりしていくうちに色々な考えが出てきて、葛藤があったんだと思います」

 そして、こう付け加えた。「泣いていましたからね。相当悔しかったんだと思いますよ。でも、この世界はそういう気持ちがないと」。いつもより長かった試合後のミーティング。反省を口にしていくうちに、目は少しずつ赤く染まっていった。

細川亨コーチと藤田悠太郎【写真:竹村岳】
細川亨コーチと藤田悠太郎【写真:竹村岳】

細川コーチにとっては鍵だった「怒ってくれる人」

 藤田悠にとって高卒2年目のシーズン。2軍では33試合に出場するなど、着実に経験を積んでいる。「もちろん1軍にも行きたいです。そういう必死さは無くしてはいけないし、自分の中でもう1回気合を入れないといけない」。ここまで二人三脚で歩んできた細川コーチも「僕の現役時代は豊田(清)さんとか、怒ってくれるピッチャーがいた。今そういう人がいるかはわからないですけど、早く気づけるように。自分の思いを伝えながら、プラスにしていけたら」。“伸び代”に期待を込めて、頼れる扇の要を目指す。

 涙を堪えていたことは「そんなことありません」と笑顔で否定した。苦い思いも糧にして、必ず成長していく。20歳の若鷹にとって、絶対に忘れてはいけない試合となった。

(竹村岳 / Gaku Takemura)