「1軍の優勝争いに加わりたい」
鷹フルでは渡邉陸捕手の単独インタビューを行いました。6月20日の登録抹消以降、1軍再昇格を目指しファームで汗を流す24歳の心境に迫ります。
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熾烈な優勝争いを繰り広げる中で、もどかしさを感じながら過ごしている。7年目の今季、開幕1軍の切符を掴んだ渡邉陸捕手。2023、2024シーズンは1軍出場がなかったが、今季は序盤から出場機会を重ね、ここまで自己最多となる24試合に出場している。しかし、6月20日に出場選手登録を抹消されて以降、ファームで調整する日々が続いている。
2か月以上が経過したファームでの生活。モチベーションを維持するのは簡単ではないが、視線は常に1軍を向いている。「1軍が優勝争いをしているので、そこに加わりたいという思いでやっています」。昨季は怪我に泣かされたが、今季はここまで大きな離脱なくプレーを続けている。だからこそ、課題はより明確になっている。
悔しさを押し殺し、自らと向き合う日々。その胸の内には、常に師と仰ぐ先輩からかけられた言葉がある――。1軍の舞台に戻るため、もがき続ける渡邉の現在地に迫る。
「スローイングとブロッキングはずっと監督に言われているので、そこをもっと上達させたいなと思っています。自分でも手応えはありますし、ブロッキングに関しても、日に日にうまくいってるのかなっていう感じはあります」
首脳陣から指摘されている課題と向き合い、地道な練習を繰り返す中で、確かな手応えも感じ始めている。ただ、現状ではまだ1軍の戦力として信頼を勝ち取るには至っていない。厳しい現実を受け止めつつ、冷静に自分自身を見つめる。
「やっぱり決めるのは監督なので、首脳陣が使いたくなるような選手ではまだないのかな、というのはあります。1軍で出られていない時点で、もっと求められている選手像というものがあるのかな、という気はします」
誰よりも祝いたかった“記録”
自身の現在地を客観的に分析する渡邉だが、その支えとなっているのが、4年連続で自主トレを共にした、中村晃外野手の存在だ。昨季、中村からは「(2軍にいることに)慣れるなよ」という言葉をかけられたという。「去年言われてから、ずっと胸の中にあります。今年も1軍が筑後に練習に来た時にも、『しっかりやっとけよ』と言われたので。そういう気持ちはあります」。その言葉が、1軍に気持ちを向け続ける要因にもなっている。
その中村が8月26日、青森での楽天戦で通算1500安打を達成した。「おめでとうございます。ホームランはヤバすぎます」と、LINEで祝福のメッセージを送ったが、本当は誰よりも近くで祝福したかった。「一番は奥さんじゃないですか?(笑)」と冗談を交えつつ、「選手としてはそうですね。その場にいたかったです」と本音を漏らした。
追いかける先輩たちの背中
1軍にいても、ファームにいても、決してぶれない信念がある。それが、試合前のルーティンだ。「ナイターだったら、トレーニング、バッティング、ランニングをしてっていうのは続けています」。その姿勢は中村ら、チームのベテラン選手たちの姿から学んだものでもある。「あれだけの選手がやっているので、もう僕もやるしかない。やらないといけない」。
シーズンも残りわずか。「毎試合毎試合、課題と向き合ってやっていくしかない」。胸に残る言葉を噛み締め、汗を流す。再び1軍の舞台で躍動し、チームの勝利に貢献するために――。どんな時でもその目は前を向いている。
(飯田航平 / Kohei Iida)