「簡単な怪我じゃなかった」 2か月の沈黙、オスナが復帰戦で激白…実感した自分の“立場”

2軍戦に先発したロベルト・オスナ【写真:竹村岳】
2軍戦に先発したロベルト・オスナ【写真:竹村岳】

かつて口にした「野球人生で緊張なんてしたことない」

 周囲に支えられて、ここまできた。だからこそ「緊張」という言葉で自らの心境を表現した。

 5日のウエスタン・オリックス戦、先発でマウンドに上がったのは右肩痛でリハビリ調整を続けてきたロベルト・オスナ投手だった。安打と四球で走者を背負いながらも1回無失点に抑え、最速は152キロを計測した。「感触は良かったです。痛みがなく投げられたのがよかったし、神様に感謝したいと思います」。自分自身に対してある程度の重圧もかけながら、しっかりとゼロを並べてみせた。

 ホークスに加入して3年目の今季。開幕から守護神の座を務めたが、25試合に登板して3勝1敗8セーブ、防御率4.32という成績に終わっていた。6月19日に登録抹消されると、リハビリ組に移行。2か月半ぶりの復帰登板を迎えたこの日、室内練習場に姿を見せると、丁寧にキャッチボールを始めた。「久しぶりの実戦で緊張しましたね。迷惑をかけたくないし、いろんなことを考えていました」と胸中を語っていた。

 MLB時代にはタイトルを獲得するなど、実績十分の右腕。何度も修羅場を乗り越え「野球人生で緊張なんてしたことがない」と口にしたこともあった。そんなオスナが、緊張した――。その言葉には、どんな意味があったのか。

久々のマウンドで味わった“楽しさ”

「自分に対するものではないですね。シーズンを過ごしている中で、ファームもここまで戦ってきた。いろいろとルーティンもあったと思います。チームとして事情がある中でも、自分が先発をさせてもらうことになったので。迷惑をかけたくないという意味で緊張はしていました」

 2軍は残り17試合。リーグ3連覇をかけて、終盤戦を戦っているところだ。チームとしての流れもある中で、リハビリ過程の自分がチャンスをもらったことを十分に理解していた。辛い期間を支えてくれた人たちのためにも“調整のつもり”でマウンドに上がる気などなかった。「もちろん自分も怪我したくないし、万全で投げられたことはよかった。迷惑をかけるわけにはいかないので、自分ができる最善を尽くそうと思っていました」。具体的に語る言葉からも感謝の思いがにじむ。

「簡単な怪我じゃなかったですね。デリケートで、そんな一気に治るものじゃないので。チームの方針にも沿いながら、ここまでリハビリしてきました。少しずつ出力も上げていけたらと思います」

 登録抹消され、初めは1か月以上のノースローから始まった。その後もネットスロー、短い距離のキャッチボールと慎重にプロセスを踏んだ。右肩から痛みが消え、追い求めてきた状態にようやく辿り着くことができた。「野球選手として投げられることはやっぱり嬉しいです。野球が好きだし、チームに貢献できる可能性がある。それが分かって良かったです」。昨季に続き、またしても離脱してしまった今シーズン。リハビリ期間を振り返り、自らに対しての不甲斐なさが口をついた。

「自分にちょっと腹が立ったというか、悲しかったですね。去年も怪我をしましたし、2年連続で怪我をするのは……。野球選手としてフラストレーションがたまる3か月でした。だからこそ復帰できたのは嬉しいですし、リハビリ関係の人と一緒にやってきて、結果が出て良かったと思います」

柳田悠岐とハイタッチするロベルト・オスナ【写真:竹村岳】
柳田悠岐とハイタッチするロベルト・オスナ【写真:竹村岳】

割合で言えば現状は「60%くらいだと思う」

 久々のマウンド。怪我明けであることも踏まえ、あえて出力は抑えるのかと思いきや、オスナはしっかりと腕を振っていた。「3か月のブランクがあった割にはできたのかなと。とにかく痛みがなかったことが一番です」と強調する。現状についても「数字的には60%くらいだと思います。100%を目指していますし、これから上げていけるように調整していきたい」と意気込みを口にした。1軍は優勝へのマジックナンバー「18」が点灯。終盤戦を戦うチームのために、まずは戦力になれるだけの状態に持っていく。

 6日に倉野信次1軍投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター(投手)をはじめ、首脳陣とやり取りを交わしてから具体的に方針が決まっていく見込みだ。支えてくれたファンにも「感謝の気持ちを伝えたいです。辛い時期もありますけど、皆さんの声はすごく力になるし、助けになる。1日でも早く(状態を)上げていけるように頑張っていくので、また応援してもらえると嬉しいです」。そう言って、深々と頭を下げた。復活を遂げ、ブルペンの重要なワンピースとなってみせる。

(竹村岳 / Gaku Takemura)