川瀬晃の活躍が目立った13日の西武戦
主力が復帰し、ベンチを温めることが増えたとしても、必要不可欠な選手であることには変わりない。川瀬晃内野手はここまで82試合に出場し、打率.261、2本塁打、17打点をマーク。数字以上に印象的な場面で好結果を残し、チームを支えている。
チームが最下位に沈んでいた5月上旬には逆転サヨナラ打を放ち、そこから5連勝。6月14日の本拠地・DeNA戦では今宮健太内野手が負傷交代した打席で適時打を放ち、小久保裕紀監督に「きょうは川瀬に尽きる」とまで言わしめた。
これまでにも何度もチームを救ってきた“スーパーサブ”。そんな27歳の本領が発揮された場面があった。14日の西武戦(ベルーナドーム)。1点を追う8回の守備の場面だった。
マウンドに立っていたのは、ダーウィンゾン・ヘルナンデス投手。先頭の古賀を詰まらせ、打ち取った打球は二塁への内野安打に。その後は佐藤に犠打を許すと、さらに自らの暴投で1死三塁のピンチを招いた。
不運な安打もあり、マウンド上のヘルナンデスは感情的になっていた。そんな中、真っ先に声をかけに行ったのが川瀬だった。「正直、声はかけにくいですよ(笑)。でもそこは頑張って、でした」。自ら英語で「落ち着いて」と伝えた。「OK、OK」と返したヘルナンデスは後続を断ち、無失点に凌いだ。
この場面、内野陣は一塁・中村晃、二塁・牧原大成、三塁・野村勇。遊撃に入っていた川瀬は最年少だったが「あそこに立っている以上、関係ない」と勇気を振り絞った。プロ入りから10年。ベンチから歴代の先輩たちを見てきた。「松田(宣浩)さんとか今宮(健太)さんとかを見てきたので。そういうのも内野手の仕事」。感情的になる助っ人にも臆せずに歩み寄った。
川瀬が気づいていた“普段との違い”
そしてもう一つ、川瀬が気づいていたことがあった。それはジーター・ダウンズ内野手の不在だった。「ダウンズがいつも話しかけていて、コミュニケーションを取っている時は、すごく楽に投げているなという印象があったので」。ベンチで常に視野を広くしていたからこその“気づき”。言葉は通じなくとも、自らが行くしかないと動いた。
この日、川瀬は2号ソロを含む3安打2打点をマーク。試合には敗れたが、1点を追う2死一、二塁では3安打目を放つなど、大事な場面で好結果を残した。8月19日には今宮が1軍に復帰。ベンチを温める日は増えるかもしれないが、首脳陣にとってこれほど頼もしい存在はない。
(川村虎大 / Kodai Kawamura)