捕手でチームトップの77試合に出場
鷹フル特任記者、むなかったんのあらたです! 2回目となる記事のテーマは「海野隆司捕手の覚悟」についてです。今シーズンはここまでチームの捕手でトップの77試合に出場している28歳。イベントで口にした「ある言葉」に隠された思いとは――。3年前の苦い思い出を糧に成長を続ける海野選手を深掘りしてきました。ぜひご覧ください!
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8月9日、日本ハムとの試合終了後に行われたイベントのMCを務めさせていただきました。そこで海野選手に対し、参加者からこんな質問が寄せられました。「今シーズンここまでで一番きつかった、疲れた試合はいつですか?」。すると、海野選手の口からは予想外の言葉が出ました。
「まだないです。これからです」
開幕から1度も登録抹消されることなく、1軍で戦い続けている海野選手。ましてや捕手というのは重労働のポジションです。きっと、頭の中にはいくつもの試合が浮かんだはず。それなのに、なぜこのような発言をしたのでしょうか。
変化した考え方「どうしたら打たれないかじゃなく…」
今シーズンを迎えるにあたって、ホークスの一番の課題は甲斐拓也捕手が抜けた穴をどのように埋めるかだと言われてきました。嶺井博希捕手、谷川原健太捕手、渡邉陸捕手、そして海野選手。誰が正捕手を務めるのか――。宮崎春季キャンプから12球団で最も激しいレギュラー争いが始まりました。そんな中で現在、有原航平投手にリバン・モイネロ投手という左右のエースが登板する試合でマスクを被る海野選手。語ってくれたのは今季得た確かな手応えと、過去の苦い経験でした。
イベントでの発言についての真意を尋ねると、海野選手はきっぱりと言い切りました。「もちろんきつい試合はあります。でも、自分の中できついと思わないようにしています。本当の勝負は8月後半から9月にかけて。その時にこそ本当にきつくて、もっと苦しい試合がくると思うので。それに比べれば全然きつくないですし、疲れもしません」。今季すでにキャリアハイの出場試合数となっている海野選手には、シーズン143試合を見据えた確かなビジョンが見えていました。
続けて、正捕手としての責任感とレベルアップを感じる言葉もありました。それは去年までと今年の考え方の変化について質問した際の答えでした。「今までは『どうしたら打たれないのか』を考えていたんですけど、今年は『どうやって打ち取りたいか』を考えるようになりましたね」。
つまり、ただ打ち取れたという結果を喜ぶのではなく、その過程が次の相手の打席にどうつながるのか、そして試合の結果にどうつながるのか――。そこまで見越して配球するようになったそうです。考え方の変化がこれまでの結果に結びつき、自身の引き出しも増える。その好循環は確かな手応えと自信につながっています。
今も脳裏に残る「10・1」…海野が学んだこと
過去の苦い記憶も冒頭の発言につながっていました。それは2022年10月1日、優勝へのマジックナンバー「1」で迎えた西武との一戦。延長11回に当時西武の4番に座っていた山川穂高内野手にサヨナラ2ランを浴びた“あの試合”です。ファンの方々の記憶にも新しいシーンですが、その時に藤井皓哉投手とバッテリーを組んでいたのが、途中出場していた海野選手。その目には涙がありました。
少し恐縮しながらも、この試合について尋ねました。「もちろん脳裏にはあります。あの時のような場面がシーズン終盤、そしてCS(クライマックスシリーズ)や日本シリーズで必ず訪れるので。あの経験をしたからこそ、今はまだどの試合もきつい、苦しいとは思わないようにしています」。優勝を目前にして逃した強烈すぎる記憶が、確実に海野選手を強くしていました。
開幕直後のなかなか勝てなかった時期や、日本ハムとの激しい首位争いを繰り広げている中で、苦しくきつい試合展開はあったはず。それでもきっぱりと「まだこれから」と口にした海野選手の覚悟。ホークスの扇の要として、常に高いレベルで自身を鼓舞する気持ちから生まれたものでした。
【筆者プロフィール】
むなかったん あらた
1995年12月15日生まれ、宗像市出身。吉本興業所属の芸歴6年目。RKBのホークス応援団長を務め、2022年からRKBラジオでホークス戦全試合を解説。宗像市観光大使にも任命されており、2024年12月にコンビ名を「とらんじっと」から「むなかったん」に改名した。野球歴は小学2年から大学4年までの15年間で、福岡教育大3年時の2017年春季リーグでは外野手部門でベストナインに選出された。
(むなかったん・あらた)