「無理。絶対できない」 13年前に受けた“衝撃”…武田翔太と上沢直之の意外な関係性

武田翔太と上沢直之【写真:竹村岳】
武田翔太と上沢直之【写真:竹村岳】

今永昇太や吉田正尚ら“1993年世代”

 2人の間には特別な関係性がある。「割と頑張っている世代なんじゃないですか? 先頭を走っている選手もいるので、自分たちも負けないように」。そう語ったのは、1994年2月生まれの上沢直之投手だ。

 今季からホークスに加入した右腕。近藤健介外野手と同期入団でプロ入りしたことは広く知られているが、武田翔太投手とも同学年だ。「(武田と)チームメートになったのは今年からですけど、自分のペースを持っているし、いろんな感覚で投げているピッチャー。ボールの投げ方とか、野球の話をすると面白いですよ」。右腕同士、顔を合わせれば自然と会話は弾んできた。

 プロ野球選手として中堅からベテランの域に差し掛かろうとしている「1993年世代」。球界でいえば今永昇太投手(カブス)、吉田正尚外野手(レッドソックス)らがいる。武田の第一印象について上沢は「衝撃的でしたよ」と振り返る。

「僕は3年目から1軍で投げ始めましたけど、それよりも前に彼は投げていた。一番最初にプロの世界で結果を出していたので。『同級生でこんなにすごい人がいるんだ』って思ったのが武田でしたね」

 3年目の2014年に8勝を挙げた上沢だが、武田はルーキーイヤーの2012年から8勝を記録していた。「今振り返っても無理です、無理。絶対にできない。テレビで見ていましたけど、武田が投げているボールは1年目じゃなかったですよ」。縦に大きく割れるカーブを駆使して勝ち星を重ね、防御率1.07という脅威的な数字を残した。まだまだ鎌ヶ谷で鍛錬を積んでいた上沢にとっては、忘れられない衝撃だった。

上沢直之が本格的に取り入れたトレーニング

 武田にとっても、今年からチームメートとなった右腕は特別な存在だと語る。他球団の同学年選手と顔を合わせていった中で、食事をしたことがあるのは上沢だけだという。「あまり関わりとかなかったと思うけど、ウワッチだけはなんだかんだ関係性は長いです。連絡もずっと取っていたし」。父親であることも共通点の1つ。お互いが1軍で投げるようになり、距離はどんどん近くなっていった。

 上沢とともに高卒で日本ハムに同期入団したのは近藤、石川慎吾(ロッテ)、松本剛(日本ハム)の3人だ。もちろん身近な存在だったが、「先発で回っていると、他の人とは(生活)リズムが違うじゃないですか」とポジションの違いがあったという。球団の垣根を越えて、福岡で食事に行ったのは武田との2人だけの思い出だ。今でこそ、シーズン中の飲酒は制限しているが「一緒に飲んだこともありましたね。美味しいものも食べましたし、知識も多くて。武田の方が大人だなって思って見ていましたよ」と懐かしそうな表情で語った。

 7月29~31日にかけてみずほPayPayドームでウエスタン・くふうハヤテ戦が行われた。本拠地で残留練習を行っていた上沢は、2軍練習に参加していた武田と顔を合わせた。その時の会話を上沢が明かす。

「それこそ『同級生も少なくなってきたし、頑張ろうぜ』って話をしました。僕の中では、武田が出てきた時の衝撃は今でも覚えていますし。同級生にそういう(刺激をくれる)選手がいると、より頑張りたいと思わせてくれるじゃないですか。1年でも長くプロの世界で投げられるように、自分も負けないように過ごしていきたいです。割と頑張っている世代じゃないかなと思うんですけどね(笑)」

 同じ世代の選手も少なくなってきたプロ野球界。上沢が「まだまだここから成長していけるように」と言えば、武田も「『いけるところまでいこうぜ』って話をしました」と明かした。このままでは終わらないと、何度でも唱え続ける。

(竹村岳 / Gaku Takemura)