小久保監督も「期間限定になる」と説明
新たな役割を与えられた。2-7で敗れた16日のロッテ戦(みずほPayPayドーム)。先発の有原航平投手は4回7失点と苦しんだものの、その後に登板した4人の投手はゼロを並べた。この試合で出番こそなかったものの、注目を集めたのが前田悠伍投手だ。
5日のロッテ戦(ZOZOマリン)で先発登板し、6日に出場選手登録を抹消された。そこからタマスタ筑後でライブBPを重ねるなど、次のチャンスに備えて準備を重ねていた。そんな中で16日に大津亮介投手が登録抹消され、入れ替わる形で再び1軍へ戻ってきた左腕。小久保裕紀監督は「期間限定になると思う。ファームで投げさせるにも、今のところ(1軍での)登板が決まっていない状況なので。それなら第2先発みたいな形と、倉野(信次投手)コーチから提案がありました」と説明した。
プロ3度の登板は全て先発登板。初めてのブルペン待機で、先輩たちからどんなことを学んだのか。「やっぱり1軍だな」と感じた明確な瞬間を口にした。
倉野信次コーチから配置転換を告げられたタイミング
一時的な“配置転換”を告げられたのは、16日朝の出来事だった。全体練習が始まる前、倉野信次1軍投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター(投手)に呼ばれ、言葉を交わした。
「『2軍で投げるよりも、こっちで投げた方が経験も積める』ということで中継ぎになりました。これからもずっとリリーフとして使うというわけではなくて、『あくまでも先発として考えているから』と。その中で枠の兼ね合いもあって、何試合かブルペンに入って第2先発で(出番を待つ)というのは伝えられました」
9月の1週目まで6連戦がない日程。現在の先発陣は小久保監督が「3本柱」と信頼を寄せる有原、リバン・モイネロ投手、大関友久投手に加えて、8勝を挙げている上沢直之投手もいる。あと1枠をライバルたちと争っている状況だった。もちろん首脳陣も先発として左腕の才能を開花させようとしており、中継ぎは一時的な処置であることは明確に伝えられた。「『2軍で投げるよりは、1軍の中継ぎで』ということだと思います」と前向きに受け取っている。
第2先発の重要性にも「例えば…」
ここからは1試合の勝敗が重みを増していく。第2先発の重要性は、前田悠もしっかりと理解していた。「例えば日本シリーズで、急にそういう起用で投げることもあるかもしれない。中継ぎの人がどうやって試合に入っているのか、勉強にもなるので。ちょっとでもいい期間にしたいです」。20歳ながら、秋の頂上決戦を見据えているのだから頼もしい限りだ。
序盤から大量ビハインドを背負った16日のロッテ戦、小久保監督が「あの展開じゃ投げさせられない」と語ったように、1度も肩を作らなかったという左腕。1巡目から配球をノートに記し、戦況を眺めた。津森宥紀投手や木村光投手ら、先輩たちがマウンドに向かっていく姿を見守った。初めてのブルペンで感じたのは、スイッチが入る明確な瞬間だ。
「誰も準備をしていない時は普通(の雰囲気)なんですけど、誰かが準備を始めたら急に空気が変わりましたね。ピリッとするじゃないですけど、メリハリがハッキリとしているのは、やっぱり1軍だなって感じました。変わったのがちゃんとわかるくらいだったので、それはすごいなと」
チームの勝敗を背負い、“仕事”を果たすためにマウンドに向かう。集中力を妨げないように、投手陣の一人一人が気を遣っているのはすぐに伝わってきた。藤井皓哉投手、松本裕樹投手、杉山一樹投手を中心に、リリーフ陣こそ今のホークスが誇る“最強の矛”。前田悠も「ブルペンにいればコミュニケーションも取れると思う。しっかりと吸収しながら、勉強できたらと思います」。今の自分にできる役割で、必死に勝利へと貢献していく。
(竹村岳 / Gaku Takemura)