迎えた“7月31日”に育成選手へ伝えた言葉 斉藤和巳監督が察する気持ち「目を背けても」

斉藤和巳3軍監督【写真:冨田成美】
斉藤和巳3軍監督【写真:冨田成美】

支配下登録期限が終了…斉藤監督の思い

 NPBの支配下登録期限が7月31日をもって終了した。ホークスでは今季、山本恵大外野手、川口冬弥投手、宮崎颯投手の3選手が2桁背番号を勝ち取った。

 一方で、他の育成選手にとっては今季中に1軍でプレーするチャンスが完全に消滅したことを意味する。厳しい現実は、若鷹とともに戦ってきたファームの首脳陣にとっても複雑な思いを呼び起こす。

 7月31日に行われた独立・四国IL愛媛との3軍戦後、斉藤和巳監督はナインを集めた。支配下登録が叶わなかった選手に伝えた言葉、そして代弁した思いとは――。

「もう仕方がない。現実を受け止めるしかないし、来年のために頑張るしかない」

 7月25日に宮崎が支配下登録され、最終日の時点で支配下枠は残り1つ。実質的に、期限内の昇格は極めて厳しい状況だった。斉藤監督は「朝からそんな重い話もしたくない。でもチームの流れ的に、このタイミングで全員が揃うことはもうないから」と、試合後に言葉を選びながら話した。

伝えた言葉「同情していても仕方がない」

 4軍監督を務めた昨季から若手の育成に尽力してきただけに、思い入れは強い。支配下登録されて1軍で活躍するものもいれば、オフに戦力外となり球団を去るものもいる。その現実に、4月には「感情がぐちゃぐちゃになる」と胸の内を明かしていた。

 ただ、現実が変わることはない。今季中の1軍昇格は叶わず、次のチャンスは来年以降に持ち越された。球団も8月には宮里優吾投手、大竹風雅をそれぞれ新潟と静岡に派遣するなど、すでに来季へ向けた準備を進めている。

「僕には期限はないから。でも気持ちはわかるからね。気持ちは理解してやらないといかん。同情していても仕方がない。現実として受け止めるしかないから。目を背けても、誰も納得せえへん」

若鷹に願った危機感「責任は自分で取るしかない」

自らは2度の沢村賞を獲得するなど、ホークスのエースとして活躍した。一方で、現役晩年は怪我に苦しみ、望んでもマウンドに戻れない日々が続いた。プロの厳しさと、責任の所在を身をもって知っているからこそ、若鷹たちに知っておいてもらいたいことがある。

「危機感を持たなあかんやつはいっぱいおるよ。本当の危機感を持っていない選手も中にはおるし、感じている選手もいる。申し訳ないけど、こちらが全ての責任を負えるわけじゃないから。責任は自分で取るしかないからね」

 決まった枠がある以上、支配下になれるのはごく一部。50人以上の育成を抱えるホークスではその多くが2桁の背番号をもらえずに球団を去る。その苦悩は首脳陣にとっても同じだ。

「過程のアプローチに関しては、もう一生懸命にやるから。選手には今まで通り、『お前ら1人1人に向き合う』っていうメッセージは伝えている」。悔しさがないはずはないが、前を向くしかない。指導者も選手と共に戦っている。

(川村虎大 / Kodai Kawamura)