昨年3月に支配下登録されて以降、初の2軍降格
自らに言い聞かせるよう、同じ言葉を何度も繰り返した。「自分に負けないように」――。5日に出場選手登録を抹消され、2軍に合流した緒方理貢外野手は静かに口を開いた。
2020年育成ドラフト5位でプロ入りし、昨年3月に支配下登録を勝ち取った。2024年は86試合に出場し1軍でシーズンを“完走”。代走や守備固めなど多様な役割に応え、チームの戦力となってきた。
今季は76試合に出場して打率.190。1日の楽天戦(みずほPayPayドーム)では「1番・中堅」でスタメン起用されたが、4打数無安打に終わっていた。背番号が変わっておよそ1年半。初めて味わった2軍降格に「(小久保裕紀)監督に『やってこい』と言われたことがあるので。しっかりと仕上げたいです」と力を込めた26歳。「自分に負けないように」と繰り返したのは、指揮官の言葉が身に染みているからだ。
入れ替わるように川村友斗が昇格…小久保監督が語った理由
「監督にも言われたんですけど、自分に負けるとそっち(楽な方)にいってしまうし、そういう選手を多く見てきた。それで1軍に上がっても結局は通用しない。上の舞台で結果が出ないのは準備ができていないとか、そういう部分だと思うので。いつ上がるかわからないですけど、そこだけを思って最後までやりたいです」
1軍は「チームの勝利」を最大の目標とし、自然と一体感が生まれてくる。一方で、ファームには若手もいればベテランもいる。雰囲気の違いに「流されるな」と、指揮官のメッセージを受け取ったつもりだ。緒方も今季がプロ5年目。手取り足取り、教わる立場ではないだけに「自分も1軍にいて(厳しいことを)言ってくれるコーチもなかなかいないと思う。徹底してやっていきたいです」と力を込めた。
ZOZOマリンスタジアムで行われた5日のロッテ戦の試合前。この日に1軍昇格した川村友斗外野手に言及しつつ、小久保裕紀監督はこう説明した。「緒方は去年から1度も外れていなかったですけど、安泰じゃないよと。そういうのも含めてですね。僕というよりもコーチから『1軍慣れが見える』という話もあったので」。入れ替えることで、改めて危機感を与えることも目的の1つだ。「最終的には必要な戦力だと思っています」とも強調した。
首脳陣から与えられた課題「足りないところがある」
緒方自身も、プロ入りして3年間は3桁の背番号を背負っていた。「難しいですよね。これだけ人数も多くて、入れ替えもなかなかないですし。慣れてしまうのはわかるんですけど……」。自らが経験した道のりなだけに、その困難さは身に染みている。そのうえで「でも(取り組みのレベルが)2軍のままだと、1軍では通用しない。こっちにいて給料が変わるわけでもないですし。やっぱりもう1回、上がらないといけない」と言い聞かせていた。
2軍に合流したこの日。表情は明るく、後輩が扉を開けてくれた時には「ありがとう!」とハキハキした言動を見せていた。1998年生まれの26歳は、2軍の野手だと最年長だ。「(雰囲気を)変えていくのは難しいので。まずは自分がしっかりとした姿を見せることです」。中村晃外野手や牧原大成内野手ら、先輩の背中から学んだことがたくさんある。今は自分が伝える側になって、濃密な日々を過ごしていくつもりだ。
「大事な戦いがここから始まってくる。いい選手が(他にも)いるのは自分もわかっていましたし、終わった時に後悔をしないように。自分に足りないところがあるから落ちたわけですし、1軍に呼ばれて打席に立った時に結果が出るように。自分に負けないようにやっていきたいです」
首脳陣からは、打撃面を課題として与えられた。2軍降格という初めての経験。「きのう(4日)も自分は(千葉に)移動していないわけじゃないですか。やっぱりずっと1軍にいたいです」と誓った。自らを律して、もう1度晴れ舞台を目指していく。
(竹村岳 / Gaku Takemura)