2軍で圧倒された“衝撃の4球”「前に飛ばない」
ドラフト5位ルーキー、石見颯真内野手がファームで躍動している。ここまで2軍戦に40試合出場して打率.276、出塁率は4割超えと、1年目としては驚異的な数字を記録。「色々と試して、少しずつ変えていることがしっくりきている」。19歳らしからぬ落ち着きぶりをみせる。
「1軍の優勝が決まった後、消化試合でもいいので呼ばれたい」と今シーズンの目標を掲げる石見。慣れない木製バットへの対応や、高校3年春から本格的に始めた内野守備など、日々課題と向き合いながら鍛錬を積んでいる。
高卒新人離れした打撃成績を残す逸材を、首脳陣はどう評価しているのか。コーチのコメントから浮かび上がった課題について本人にも自己分析してもらった。そこには2軍で衝撃を受けた“ある1打席”の経験があった。
「初めて『真っすぐが前に飛ばないかもな』と思いました。いつも見る155キロの直球より全然速く感じました」
石見が明かしたのは、2軍戦でオリックス・山下舜平大投手と対戦した時の衝撃だった。タマスタ筑後で行われた17日の2軍戦。初球から150キロ超えの直球に対して3球連続でファール。4球目にアウトコース低めへ投じられた128キロのカーブにタイミングが全く合わず、空振り三振を喫した。
わずか1打席だが、村松コーチは石見の姿に“1軍レベル”の壁を感じたという。「あれだけの真っ直ぐは見たことがなかったと思う。そこからの変化球、ボール球を振らないようにする対応は、まだまだこれからですね」と厳しい評価を下した。
持ち合わせる類まれなるセンスと“悪癖”
とはいえ、まだ高校を卒業して1年も経たない19歳。2軍でトップレベルの四球率を残し、打席数に対する四球数の割合を示す四球%(100打席以上)は、2軍全体で4位の18.8%という衝撃的な数字を記録している。(8月2日終了時点)
村松コーチも「やっぱり根本的なセンスは高いと思います。バットに当てる力、ゾーンを見極める能力も高い」とミート力と選球眼を絶賛する。「でも結果が欲しいので、調子を落とした時はバットに当てる能力があるだけに当てて打ちにいく」という“悪癖”にも言及した。
実際に石見は6月に一時期3軍へ合流し、2軍復帰後には松山秀明2軍監督やコーディネーターから「スイングスピードが落ちている」と相次いで指摘されたという。そこから10打席ほどヒットが出ず、苦しい時期を過ごした。
コーディネーターから「3球、全力で振る練習をしろ」とアドバイスを受け、実践するとスイングスピードが徐々に戻り、打撃も復調した。それでも村松コーチは“脆さ”に触れ「もう一度しっかり体を鍛え、スイング力を上げることに取り組んでほしい」と期待を込める。
村松コーチが語る“将来像”「3割20本くらい」
村松コーチに将来像を尋ねると、「3番とかを打ってほしい。ショートで打てる選手になってほしいです。長打力もある程度あるので、3割20本くらい打てるようになれば」と明かす。その姿は、まさに石見自身が目標に掲げる「近藤健介」の姿と重なる。
「期待値は高い選手ですから。体が大きくなってまた変わると思いますよ」と、そのポテンシャルを絶賛した。そして「リーグ(優勝)の争いが止まってからになるかもしれませんが……」と今季中の“1軍デビュー”の可能性も口にした。素質を秘めた19歳の未来に、期待が高まる。
(森大樹 / Daiki Mori)