周東佑京が好機で“捨てた”1打席「去年だったら…」 首脳陣も絶賛した最高の凡打

楽天戦に3試合ぶりに出場した周東佑京【写真:古川剛伊】
楽天戦に3試合ぶりに出場した周東佑京【写真:古川剛伊】

3試合ぶりの先発出場で2安打「ほっとした」

 チームに勝利を呼び込む“最高の凡打”だった。2日の楽天戦(みずほPayPayドーム)、「1番・中堅」で3試合ぶりに先発出場した周東佑京内野手が確かな存在感を示した。初回に先頭で右翼線への二塁打を放つと、4回には快足を飛ばして遊撃への内野安打とした。“復帰戦”で2安打をマーク。「2試合休んでどうかなと思っていた中で、1打席目でああいう打球が打てて。それが全てじゃないですか。ほっとしました」。試合後に見せたのは安堵の表情だった。

 腰の痛みのため2試合を欠場したが、1日に病院で治療を受けて症状が改善した。「めちゃくちゃ良くなって、逆に今日の練習は『動けすぎて怖いな』っていう感じでした」。その言葉を裏付けるような躍動ぶりで、周囲の不安を吹き飛ばした。周東が2安打と同様に大きな手ごたえを口にしたのが2打席目の二ゴロだった。首脳陣も絶賛した凡打に、選手会長としての思いが詰まっていた。

「あれはもうナイスジャッジでしょう。セカンドが下がっていたし、あそこにゴロを打てば1点だから。周りが見えてるからこそ打てた『最高の打点かな』と思いますけどね」

 奈良原浩ヘッドコーチが絶賛したのは2回、牧原大成内野手が先制打を放った直後の1死二、三塁の場面だった。周東は相手の守備位置をしっかりと確認し、ゴロを放った。セカンドはバックホームを諦め、一塁へ送球。貴重な2点目を奪った。

背景に初回の逸機…首脳陣「周りが見えている」

「セカンドが下がっていたのは見えていたので。ここは外野フライ打つよりもゴロの方が(点の入る)確率が高いなと思って打ちにいきました。あそこの1点は本当にほしかったので。ほぼ狙い通りにセカンドゴロが打てて良かったのかなと思います」

 周東がどうしても1点にこだわったのには理由があった。初回に1死満塁の好機を作りながら、山本恵大外野手が二ゴロ併殺打に倒れて無得点に終わっていた。2回に先制したが、1点だけで終われば流れが相手にいきかねない。試合の流れを読み、自らの打席を“捨てる”ことを選んだ。

 今シーズンは度重なるコンディション不良と付き合いながら、ここまで規定打席をクリアしたうえでリーグ3位の打率.307、同8位の84安打をマーク。自身初の打撃タイトルも見えている中で、安打1本を積み重ねる大切さは本人が一番わかっている。それでも周東ははっきりと言い切った。

「あまり打率とかは考えていないので。今はどうやったら勝てるかっていうのが1番大事。自分の成績よりも、とりあえず勝てるように。でも、去年とかだったら無理やりでもヒットを打ちたいなと思っていたと思うんですけど。今はそんなことを言っている状況でもないですから」

 試合に出られず、チームに迷惑をかけているとの思いは周東自身が強く抱いていることだ。自分のための1安打よりも、チーム勝利に導く凡打を――。その覚悟が伝わった二ゴロだった。

(長濱幸治 / Kouji Nagahama)