野村勇の観察眼が呼び込んだ“幸運” 65分間中断も…的中した「構えてくるやろうな」

ロッテ戦に出場した野村勇【写真:古川剛伊】
ロッテ戦に出場した野村勇【写真:古川剛伊】

17日のロッテ戦は降雨コールドで引き分け

 背番号99の周到な準備と集中力から生まれたプレーが、“幸運”を呼び込んだ。「いつ中断するか、コールドゲームになるか分からない状況だったので……」。断続的に降りしきる雨の中、好守を披露したのが野村勇内野手だった。

 17日に北九州で行われたロッテ戦。雷を伴う強い雨の影響で、3回を終えた時点から65分間の中断を余儀なくされた。グラウンドに乾いた土が撒かれ、整備が終わった直後の4回。2番手でマウンドに上がったばかりの大山凌投手に対し、先頭の友杉が三遊間への強い打球を放った。

 三塁を守っていた野村は、先ほどまでぬかるんでいたグラウンドとは思えないほどの足さばきを見せ、打球に飛びついた。しっかりとボールをつかむと、素早く起き上がって一塁に送球してアウトをもぎ取った。1時間を超える中断明けというタイミングで飛び出したビッグプレー。完璧に当たっていた“予感”とは――。野村勇が解説した。

「雨が止みそうだったので、集中力は切らさずに。中断後の一発目のプレーだし、『友杉はセーフティ(バントを)構えてくるやろうな』とか。そこへの準備はできていたのかなと思います」

本多コーチも称賛「時間が空いた後のプレー大事」

 グラウンド状況、仕切り直しのプレーボール、そしてマウンド上には代わったばかりのピッチャー。セーフティーバントを仕掛けるにはバッチリのタイミングだった。野村の想定通り、友杉は初球にバットを寝かした。投球がボールとなり、バントは敢行されなかったが、野村は三塁の位置から猛ダッシュを見せてプレッシャーをかけていた。

 初球をめぐる一連の動きが、その後の“横っ飛び好捕”につながった面もある。「地面が悪いのは当然把握していましたし、滑るやろうなと頭に入れていましたけど。すごくきれいに整備してもらっていて。グラウンドも平らになっていたので。大丈夫だなと」。プレーが再開するまでしっかりと足場を確認していた「凡事徹底」が生んだプレーだった。

 代わりばなの大山凌投手を救った好守に、本多雄一内野守備走塁兼作戦コーチも目を細めた。「プレーボール直後の一発目とか、ああいう時間が空いた後の最初のプレーっていうのは大事ですよね。そういう意味で、本当にいいプレーを見せてくれたなという感じです」。集中力が切れやすい場面でも、準備を怠らなかった野村の姿勢を称賛した。

 試合は6回表にロッテが4得点していたが、再びの降雨で試合が中断。そのままコールドゲームとなり、結果的には引き分けで終わった。「運も味方につけて、という感じですね」。そう振り返った野村だが、何より運を持ってきたのは自身のプレーだった。ここまで主力の不在をカバーする働きを見せてきた28歳が、またチームを救った。

(長濱幸治 / Kouji Nagahama)