初安打の前夜…近藤と初めての食事
初めて響かせた快音の裏に、天才打者からの“予言”があった。庄子雄大内野手は10日のオリックス戦(京セラドーム)でプロ初安打を放った。しぶとく運んだ中前打に「プロ野球人生がスタートしたなって感じのヒットでした。一生忘れることはないんじゃないかな」。頬を緩ませながら振り返った。
この日は初スタメンで初安打を記録しただけでなく、初盗塁、そして初失策も喫した。小久保裕紀監督は試合後、「初エラーもあったね」と指摘しつつも「プロ野球選手になったという感じですね」と若鷹を称えた。“初物づくし”だった日の前夜、初めて近藤健介外野手と食事に行ったという。その席で、近藤からある“予言”が飛び出していた――。
「『あしたスタメンあるぞ』って言われていたんですよ」
想像もしていなかっただけに、大先輩の言葉に驚いた。庄子は5月にプロ初昇格を果たしたが、同26日に登録抹消。2度目の昇格で初めて近藤と食卓を囲んだ。「野球の話もそうですけど、私生活とか、休みの日の過ごし方も聞けたので。でも一番はバッティングのことを聞けたので良かったかなと」。濃密な時間を過ごした。
そんな中で言われたスタメンの“予言”は的中した。「『いやいや、ないですよ』って言っていたんですけど、次の日グラウンドに行ったら9番・二塁でした」。スタメンが伝えられ背筋が伸びた庄子に近藤は「長くいるとわかるんだよ」と笑って声をかけたという。「バッチリ当たったんで。その辺も含めてすごいなって思いました」と振り返る。
忘れぬ初対面…緊張の面持ちで「庄子です」
横浜高、神奈川大を経てドラフト2位で入団。高校の先輩でもある近藤は憧れの存在だった。今年1月末の必勝祈願。緊張しながら「横浜高校出身の庄子です」と挨拶したことは鮮明に覚えている。春季キャンプはルーキーで唯一のA組。短い時間だったが、近藤から打席での目付の仕方などを学ぶことができた。開幕を2軍で迎えるも「理想形は近藤さんのバッティングなので。自分も早く同じ舞台に上がって、色々な話を聞きたい」。その一心で筑後で練習に励んだ。
2度目の昇格、プロ入りから5打席目で念願の初安打。ベンチに帰ると、チームメートから盛大な祝福を受けた。その中には近藤の姿もあった。「こんな自分に……。まだ1軍でなにも実績を残していないのに。近藤さんもですけど、全員がナイスバッティングって。おめでとうって言ってくれて嬉しかったです」。
喜ぶ先輩たちの姿を見て、ようやくスタートラインに立ったことを実感した。「インパクトの瞬間と打球がセンターに落ちる瞬間はすぐにでも思い出せますね。思い出せるというか頭の片隅にあるかなっていう感じです」。まだまだ遠いが、憧れの背中を追い続ける。
(川村虎大 / Kodai Kawamura)