5回まで粘って無失点投球も…6回に「暗転」
一振りの“恐怖”を改めて味わった。10日のオリックス戦(京セラドーム)、先発した松本晴投手が試合開始直後から感じていた違和感――。5回まで苦心の投球でゼロを並べていた左腕の「予感」が最悪の形で的中した。
両チーム無得点で迎えた6回1死満塁、対峙したのは紅林だった。ここまでの2打席は内角低めのスライダーでともに空振り三振に仕留めていた相手。1ストライクからの2球目にバッテリーが選択したのも、同じ球種、コースだった。しっかりと投げ切ったボールをすくわれた打球は無情にも左翼席へ。痛恨の満塁弾を浴びた左腕は顔をゆがめた。
「あのスライダーは失投じゃなかった。コースにもいっていたし、打った相手が上だったということ。悔いはないです」。気丈に振り返った松本晴だが、続けて口にしていたのは抱えていたかすかな“不安”だった。
松本晴のすごみはパ・リーグトップの「0.19」
「きょうは初回から打球角度のついた外野フライが多くて。弱いゴロを打たせられなかったところがいつもと違うなと。どこかアジャストできていない部分があって、全体としての反省点はそこですね。(本塁打を浴びたのは)必然というわけではないですけど……」
松本晴の大きな特徴として挙げられるのは、被本塁打数の少なさだ。10日の試合前までに重ねた投球回47回1/3で許した本塁打はわずか1本のみ。9イニングあたりに打たれた本塁打を示す本塁打率「0.19」は、今季40イニング以上を投げたパ・リーグの投手では最も低い数値だった。プロ通算でも75イニングを投げて、浴びた本塁打は3本のみ。本塁打を許さないという点において、非常に優れた投手といえる。
本人もその点は十分に理解している。「打球を上げさせないピッチングというのが持ち味だとは思います」。だからこそ、この日は初回から強い外野フライが多かったことに「少し嫌な感じはありました」と“悪い予感”があったことを認めた。
指揮官は今後に期待「逆に言えば伸びしろがある」
痛恨の一発を浴びたとはいえ、本格的に初めて先発ローテに加わっている今年の投球は評価されるに値するものだ。前回登板となった3日の日本ハム戦(みずほPayPayドーム)では、自己最多の123球を投げ抜き、7回無失点。こちらもキャリアハイの14三振を奪った。ここまで19試合に登板して3勝3敗、防御率2.22と、先発陣の一角に相応しい成績を残している。
10日の試合後、小久保裕紀監督は満塁弾を浴びた直前のバント処理に苦言を呈したものの、「逆に言えば伸びしろがありますね。投手にとってフィールディングが大事だと気付いてくれれば、大きく育つんじゃないですかね」と改めて期待を口にしていた。
悔しい被弾を通して、再び自身の強みと修正点を再確認した左腕。「シーズンの一番大事な最終盤、そしてポストシーズンで投げられるように信頼を積み重ねていくしかない」。1カ月ぶりに喫した黒星を糧にし、さらなる成長を遂げてみせる。
(長濱幸治 / Kouji Nagahama)