松本裕樹が絶賛「能力は間違いない」 違和感を見抜いた眼力…育成右腕に授けた“相棒”

松本裕樹(左)と会話する宮里優吾【写真:冨田成美】
松本裕樹(左)と会話する宮里優吾【写真:冨田成美】

きっかけは“中継ぎの柱”からの贈り物

 好投を続ける背景には、意外な人物の存在があった。育成2年目の宮里優吾投手が、支配下登録の期限が迫る7月末に向けて猛アピールを続けている。今季2軍戦では14試合に登板し、防御率0.60。安定した投球を披露し、日を追うごとに首脳陣の評価も高まっている。

 数字だけを見れば、6月20日に支配下登録された川口冬弥投手に匹敵する結果を残している。確かな技術の向上はもちろんだが、ある先輩投手とのやりとりから生まれた“モノ”が好投を支えていた。

 そのきっかけをくれたのは、中継ぎ陣の柱としてチームを支えている松本裕樹投手。1月の自主トレ中、松本裕にそっと手渡された“相棒”が、23歳の運命を大きく変えようとしている。「今でも大切にしています」。好調の裏にあった2人のやりとりとは――。

突然かけられた言葉「これ使ってみ」

「僕の投球フォームを見て『ちょっとこれ1回使ってみ』って。マツ(松本裕)さんが使っていたグラブを貸してもらったんです。投げてみたら『そっちの方がいいよ』と言ってもらえました」

松本裕樹のグラブを手にする宮里優吾【写真:飯田航平】
松本裕樹のグラブを手にする宮里優吾【写真:飯田航平】

 約半年前の出来事だった。今季に向けて、尾形崇斗投手とともに自主トレに励んでいた宮里に声をかけたのが松本裕だった。後輩のキャッチボール姿に抱いた“違和感”を右腕はこう明かした。

「動きとグラブがあってなさそうに見えたんです。グラブを握るような使い方をしているように感じたので」。もっと宮里のポテンシャルを引き出せるのではないか――。そう直感した松本裕は「エネルギーの伝わり方が変わりそうな気がしたので」と、惜しむことなく自身のグラブを差し出した。

松本裕樹(右)、尾形崇斗(中央)と会話する宮里優吾【写真:冨田成美】
松本裕樹(右)、尾形崇斗(中央)と会話する宮里優吾【写真:冨田成美】

見抜いた違和感…松本裕が惜しまなかった理由

 先輩からもらった突然のアドバイスに宮里は心を揺さぶられた。「感覚的にすごく良かったんです。こんな育成の僕にグラブを貸してくれるなんて、本当に嬉しかった。本気でやらないといけないと思いました」。練習後には松本裕から「これ使ってていいよ」と正式にグラブを託され、今でも大切に使い続けている。

「もちろん能力は間違いなくあると思うので。それをどれだけ生かせるか、それだけかなと思います」。ホークスの中継ぎ陣を支える右腕がそう語るだけのポテンシャルを、宮里が秘めているということだろう。“運命の期限”までは残りわずか。「そんな時期ですもんね。頑張ってほしいです」とエールを送った松本裕。先輩の期待に応えるべく、2桁の背番号を必ず手にしてみせる。

(飯田航平 / Kohei Iida)