藤井皓哉の“根性”…原点となった広島からの戦力外 打球直撃も続投した理由とは

ロッテ戦に登板した藤井皓哉【写真:小林靖】
ロッテ戦に登板した藤井皓哉【写真:小林靖】

2日の日本ハム戦で登板…3者連続三振でピンチを脱した

 クールな表情の裏で、誰にも負けない熱い気持ちを抱いている。悔しくて忘れられない戦力外通告の経験が、自分自身を変えた。2日の日本ハム戦(みずほPayPayドーム)。8回に登板した藤井皓哉投手は無死満塁を招いたものの、3者連続三振でピンチを脱した。「自分で出したランナーだったので。リズムよくいけなかった、そういう気持ちの方が強いです」と汗を拭って振り返った。

 右腕に打球が直撃するアクシデントから“復帰登板”となったこの日のマウンド。「しっかり抑えられていないし、イメージしたボールが最初から投げられているわけではなかった」と反省を口にしたが、結果的にチームはサヨナラ勝ち。1点ビハインドの終盤に点を与えなかった藤井の投球が、何よりも大きかった。

 6月27日のロッテ戦(ZOZOマリン)、寺地が放ったライナー性の打球が右腕に直撃した。その後もマウンドに立ち続けると、自らの暴投で進塁を許すなどコントロールに苦労したが、21球で1イニングを投げ切った。「自分でいけると判断したからです」とは言うものの、降板という選択肢はなかったのか。藤井を突き動かすのは「譲らない」という強い思いだった。

「僕らはマウンドでしか仕事ができない。それを自分から放棄することは絶対にないです。手放すことで、他の人にもチャンスが広がるわけじゃないですか。自分の立場を勝ち取っていくには、マウンドの上で表現するしかないので。そんな簡単に降りるっていう選択は絶対にしないです」

 マウンドへの執着心が原動力だ。2020年オフ、広島から戦力外通告を受けた。翌年は四国IL高知に所属したが、NPBにおいて一度は“仕事を失った”経験がある。カープで過ごした6年間を含めて「自分の責任なんですけどね」と受け止めつつ、「僕の強みではあると思います。投げることに対して探究心がなくなると、生きてはいけませんから」。晴れ舞台で投げられることに、心から感謝する。だからこそ、簡単に譲るつもりはさらさらない。

2020年オフに広島から戦力外通告…右腕に与えた影響は

 2022年1月にホークスと育成契約を結び、わずか2か月半で支配下契約を勝ち取った。この年、キャリアハイとなる55試合に登板したが、開幕当初はビハインドの場面を託されていた。結果を出し続けたことで、自らの立場を確立していったことは記憶にも新しい。「勝ち取ってきたっていうのは、やっぱり自分の中にもあるので。(マウンドは)簡単には譲れない部分はあります」とキッパリ言い切った。

2日の日本ハム戦に登板した藤井皓哉【写真:古川剛伊】
2日の日本ハム戦に登板した藤井皓哉【写真:古川剛伊】

 根性こそ右腕の原点だ。“鷹デビュー”を果たした時を、ふと思い出した。2022年3月26日、開幕2戦目となった日本ハム戦(みずほPayPayドーム)の9回に登板。清宮に被弾して失点を喫し、1イニングを投げ切れなかった。翌27日、今度は5回1死満塁からマウンドへ。ピンチをしのぐと、直後に打線が逆転したことで移籍後初勝利を手に入れた。

「やられた後にもう1度、すぐチャンスをもらえたことが僕にとって本当に大きかったんです」。戦力外通告を経て、独立リーグでのプレーも経験した。一回一回の登板が、自分の人生にどれほど影響を与えるのか。痛いほど理解しているつもりだ。「目に見えないかもしれないですけど、“やり返す”だとか、そういう気持ちが大事だと僕は思っています。結局この世界はやるか、やられるかなので」。表情に出すことは少ないかもしれないが、熱い思いと準備を重ねて、1軍のマウンドに立ち続けている。

被弾の翌日に「やり返す」…大切にする“目に見えないもの”

「打たれるのは、評価が下がるということ。それは年数を重ねても変わらないし、その気持ちがなくなると落ちていくんだろうなって思うので。もちろん打たれることもありますけど、ゼロで抑える努力をしているかどうかというのは、やっぱり大事なのかなと思います」

 松本裕樹投手、杉山一樹投手とともに、必勝パターンを担う2025年。ブルペンを支え続けて、秋には必ずチームを歓喜へと導いてみせる。

(竹村岳 / Gaku Takemura)