6月全6試合で複数安打…月間打率は驚異の6割
今季初の4安打を重ねても、なお貪欲だった。「5打席目に止まったっす」。試合後、冗談とも本心ともとれる言葉を口にした柳町達外野手。6月に入って全6試合で複数安打をマークし、25打数15安打で打率は驚異の6割。勢いはとどまることを知らない。
プロ6年目にして覚醒の時を迎えようとしている。ここまで打率357、3本塁打、24打点をマーク。出塁率.456、得点圏打率.472も極めて優秀な数字だ。8日のヤクルト戦で4打席に立てば規定打席に到達する。普段は辛口の小久保監督も7日の試合後には「もう『外せない選手』から『チームを引っ張る、牽引する選手』になりましたね」と賛辞を贈った。
「まあ正直たまたまな部分というか、飛んだコースが良かったという部分もあると思います」。柳町は冷静に分析しながらも、「いいところに飛んでいるのは好調の証なのかなとも思います」と手応えを口にした。ホークスが誇るヒットメーカーは背番号32をどのように見ているのか――。近藤健介外野手と周東佑京内野手にありのままの印象を聞いた。
ネクストから見守る近藤が口にした「変化」
「元々、技術は高い選手なので。今は『試合に慣れてきた』っていうところじゃないですかね」。高く評価したのは昨季のリーディングヒッターで、通算打率.307を誇る球界屈指の安打製造機、近藤だった。
3日の中日戦(みずほPayPayドーム)から3番に入った柳町を、近藤は5試合続けてネクストバッターズサークルから見守っている。目の前に映る28歳の打席姿に確実な変化を見出していた。
「打ちそうな雰囲気はもちろんありますし、なにより対応がいいんじゃないですかね。見送り方もいいですし、そこは本人もいい感覚があるんだと思います」。柳町の好調ぶりは、希代のヒットメーカーが太鼓判を押すほどだ。
「競い合っているので」…周東が明かした“真意”
「今はバットを振ったらヒットなので。『遠い彼方に彼は行ってしまいました』と書いておいてください。ちょっと“白旗”です」
どこか悔しそうな表情で言葉を口にしたのは周東だった。5打席全てで出塁し、3打数3安打1打点をマークした3日の中日戦、4打数2安打1打点と活躍した柳町とともにお立ち台に立った選手会長は、こう口にしていた。「柳町選手と競い合っているので。本当は1人で立ちたかったですけど、柳町選手が打ったので。これからも高め合って頑張っていきたいです」。
ファンを喜ばせるためのリップサービスかと思いきや、実情は違った。「本当にそういう話はしています。打率は数字が動くし、あいつはフォアボールも多いのでアレなんですけど。ヒットの本数は競っています」。安打数は柳町が51本で、周東が47本。激しく競り合っているからこそ、悔し気な口ぶりだった。
先輩2人から絶賛された柳町だが、「まだまだこれからです」と気を緩めるそぶりはない。上位打線を担う3人が競うようにヒットを乱れ打ちしていけば、チームの状態もおのずと上向く。高レベルのライバル関係から目が離せない。
(長濱幸治 / Kouji Nagahama)