ほろ苦い“1軍デビュー”だったが、これが自分の現在地だと受け止めている。イヒネ・イツア内野手は試合後、何度も「実力が足りない」と繰り返した。2022年ドラフト1位で入団した大型内野手も今年で3年目。危機感を募らせている。
23日に宮崎・SOKKENスタジアムで行われたオリックスとのオープン戦。イヒネはプロ入り後初の1軍合流だった。前日に1軍に呼ばれてベンチ入りし、7回の代打から途中出場。遊撃では2つのゴロを難なく処理したが、小久保裕紀監督からは「1軍の選手には程遠い」と厳しい指摘を受けた。
出番は7回2死だった。庄子雄大内野手の代打で出場し、川瀬堅斗投手の1球目。甘く入った直球を積極的に振りに行ったが、詰まった。バットは粉砕され、力のない二ゴロ。9回2死でも二飛に倒れた。「緊張感があって特別でしたね。良い意味でも悪い意味でも。ちょっと固くなってしまいました」。反省を口にした。
愛知・誉高から2022年ドラフト1位でホークスに入団。類稀なる身体能力で走攻守3拍子揃った大型遊撃手として期待されていた。しかし、昨季は2軍で82試合に出場し、打率.177、2本塁打。守備でも20失策し、そのうち11個が悪送球だった。
この日の守備では2度のゴロを華麗に捌いた。しかし、小久保監督から苦言を呈されたのは守備練習中の送球。「最初の守備練習から3球連続ショートバウンド。4球目に胸に投げるというね。この入りでは1軍じゃ通用しないんで」。厳しい言葉は期待の裏返しでもあるが、イヒネ自身も自分が“1軍レベル”にいないことは痛感していた。
チームでは川瀬晃内野手が第1クールで右膝を負傷、今宮健太内野手も左ふくらはぎを痛めている。遊撃争いが激化する中、昨季途中から加入したジーター・ダウンズ内野手、ドラフト2位ルーキーの庄子がアピールを続けている。一方で、イヒネはB組で汗を流す日々。「今宮さんや川瀬さんが怪我したからどうというよりは……」。そう切り出したイヒネは、自らの胸中を明かした。
「悔しさはずっとありました。でも、実力が足りていないので。僕に実力があれば(他の選手の)怪我がどうとか関係ない。上手く言えないんですけど……自分の実力次第なので。他人は他人。自分の実力を上げるだけって感じです」
何度も繰り返した「実力」という言葉。具体的なことを聞いても「全部です。打撃から守備、メンタルとかも全てにおいて実力が足りない」。ドラフト1位でも入団後は実力の世界。力がなければ、使ってもらえないのはわかっている。
1軍戦に呼ばれたことはイヒネにとって良い経験にはなった。「ずっと1軍でプレーすると思って練習していたんですが、実際にやるのとでは違いました。レベルもそうですし、周りとかベンチの雰囲気とかも」。壁の高さは理解した。ゆっくり登っている時間はないと、自らに言い聞かせていた。