突然の人的補償も消えた不安…伊藤優輔が感謝した“存在” 怒涛の1か月、感じた巨人との違い

伊藤優輔【写真:竹村岳】
伊藤優輔【写真:竹村岳】

キャンプインまで半月…多忙が忘れさせた不安「全然暇がなかった」

 新天地でも、やることに変わりはない。甲斐拓也捕手の人的補償で巨人から加入した伊藤優輔投手は先発ローテ争いの真っ只中にいる。「だいぶ慣れてきたかなって感じです」。チームにも馴染み、シーズンへ向け、順調な仕上がりを見せている。

 今季こそと飛躍が期待されていた中での移籍だった。巨人では、昨季1軍デビューし、リリーフで8試合に登板。防御率1.04をマークし、オフには阿部慎之助監督から先発起用を明言されていた。そんな中、1月に携帯が鳴った。球団事務所に呼び出され、人的補償として移籍することを伝えられた。

「もちろん驚きましたけど、それがプロの世界なので」。すぐに受け入れられたのには理由がある。人的補償が発表されたのは1月16日。キャンプインまで半月というところで、移籍の準備に引越し手続き……。多忙を極め、ゆっくり考える時間なんてなかった。

「全然暇がなかったので。それが逆にいい形になって。うまく流れに乗ってこれたかなと思います」。福岡への引越しはまだ完了しておらず、キャンプ終了後もやることは多い。「東京を出ることに不安はありましたけど、チームが変わる事に関しての抵抗はないですね」と冷静だ。

“新加入組”が多かったのも伊藤にとって良かった。キャンプでは浜口遥大投手や途中離脱する前までは上茶谷大河投手らがキャッチボール相手。「一緒に移籍してきた人たちと最初はよく一緒にいて。そこから(交流が広がった)。今はそれなりにコミュニケーションが取れていると思います」。徐々にチームにも慣れていった。

 リーグも変わったが、戸惑いは意外にも少ないという。「強いて言えば」と明かしたのは練習時間。「バッター(の練習を)やらなくていいということですかね。練習時間として短くなるので、それがないのが一番ですかね」。投球練習に時間を割くことができ、メリットの方が多かった。

 キャンプでは、13日のライブBPで打者8人に対し無安打3奪三振。17日の紅白戦では多少制球が乱れる場面があったものの、先発で2回無安打1四球と好投した。同日の最速は144キロ。「順調にきていると思います」とうなずく。

 ホークスは今オフ、伊藤以外にも上沢直之投手ら先発を補強。残る2~3枠をかけて、熾烈なサバイバルが始まっている。伊藤もその一人として期待がかかるが、「(巨人とは)同じような投手状況だと思いますし。周りがどうこうよりも、自分のやるべきことしっかりやってって言う部分ではチームが変わっても変わらないので」。自分と向き合う日々だ。

「形はどうであれ、1軍に1年間いることが、チームに貢献できている証にもなる」。それが“指名してくれた”ホークスへの恩返しでもある。

(川村虎大 / Kodai Kawamura)