覚悟の“ハワイ断ち”だ。「僕は来年も挑戦者というか。立場を掴みにいかなきゃけないので」。チームがハワイへの優勝旅行に出発してから一夜が明けた11日、みずほPayPayドームでトレーニングを行った杉山一樹投手は引き締まった表情を見せた。
今季チームトップタイの50試合に登板して4勝18ホールド1セーブ、防御率1.61をマークした杉山はリーグ優勝に大きく貢献した。南の島でつかの間の休息を楽しむ権利はもちろんあるが、右腕がそれをよしとしなかったのは、強い責任感があったからだ。
小久保裕紀監督が明かした来季の中継ぎ構想。基本的に1イニングを任せる投手として6人の名前を挙げた。ロベルト・オスナ投手、ダーウィンゾン・ヘルナンデス投手、松本裕樹投手、藤井皓哉投手、尾形崇斗投手、そして杉山――。指揮官の信頼をしっかりと受け止めた右腕は口を開いた。
「素直にうれしいですけど、『計算外だった』といわれないようにやりたいですね」
杉山が最初に目にしたのは別の記事だった。「尾形のことが書かれた原稿をたまたま見ていたら、文章の中に自分の名前が出てきたので『えっ』てなって。それで小久保監督が話していた記事にたどり着いた感じです」。いわゆる“勝ちパターン”の一角として数えられたことで背筋を伸ばした。
優勝旅行に参加するかどうかは当然、選手それぞれの考えがある。右腕が口にしたのは「もったいないですよね」との言葉だった。「いつでも行けますし。ベテランの選手とかはいいですけど、僕は来年も挑戦者なので。今年も日本一にはなれなかったですし、やることいっぱいあるやろって感じです」。
“勝ちパターン6人衆”の一員として、来季はさらなる高みを目指す。目標に掲げるのは防御率1点台前半だ。「実力が数字として出るのは防御率なので。勝ち負けとかは運の部分もあるじゃないですか。点を取られないというのが仕事なので。今年よりもいい数字を出したいですね」と力をこめる。
そんな右腕が取り組もうとしているのがカーブの精度向上だ。今季は「3試合に登板して1球投げるかどうか」という投球割合だったが、「やっぱり僕は真っすぐとフォークを待たれることが多いので。カーブでポンとストライクを取れれば、相手にも色んな選択肢を与えることになる。自信を持って投げられるようにしたいですね」とうなずく。
「良くても悪くても今年が最後」と不退転の覚悟で臨んだ今シーズンは一気に飛躍を遂げた。気を緩めることなく先を見据える右腕。来年こそ日本一をつかみ取り、最高の気分でハワイを楽しむつもりだ。