退団のウォーカー、愛された人柄…企画した誕生日会 栗原陵矢と通訳なしの“2人メシ”秘話

ソフトバンクのアダム・ウォーカーと重田広報【写真:長濱幸治】
ソフトバンクのアダム・ウォーカーと重田広報【写真:長濱幸治】

昨オフに巨人からトレード加入も…わずか1年で退団

 ソフトバンクは2日、昨オフに巨人からトレード加入したアダム・ウォーカー外野手と来季の契約を結ばないことを発表した。わずか1年で退団となった助っ人が口にした「みんな家族だと思っている」——。シーズン中に気遣いあふれる行動を見せていた。

 ウォーカーは今春のオープン戦で12球団トップの5本塁打をマークするなど、持ち前の長打力で猛アピール。3月29日の開幕戦は「7番・指名打者」でスタメン出場したが、その後は不振に陥り4月30日に出場選手登録を抹消された。その後は1軍に昇格することなく今季が終了。打率.169、1本塁打、3打点と期待に応えることができなかった。

 長い2軍暮らしにも腐ることはなかった。「1日でも早く1軍の舞台で試合がしたい。そのためには練習しかないんです。(練習に)早く来ますし、遅くまででもやります。練習あるのみです」と、アーリーワークや居残り練習を熱心に行う姿が見られた。5月末には球団スタッフに対し、粋な計らいも見せていた。

「重田が誕生日(5月30日)だと言うので、祝ってあげたいなと。食事に誘いました」。重田広報と囲んだのは、ホルモンがたくさん入った鍋だった。

「せっかく日本にいるので色んな事を学びたいですし、新しいものに挑戦するのも好きなので。日本に来る前にはもちろん食べたりしなかったですし、今回も食べる前は『どうかな』と思っていたんですけど、想像していたよりもおいしかったです。センマイ刺しも食べましたよ」。ウォーカーは人懐っこい笑顔を見せた。

 重田広報が明かしたのは、ウォーカーの“マメな一面”だった。「1か月前くらいに誕生日の話をしたら、1週間前、5日前、3日前と定期的に『いついく?』『何が食べたい?』と連絡してくれて。本当に優しい人って感じです」。人柄に感銘を受けた様子だった。

 選手だけではなく、裏方にも気さくに接したウォーカー。「選手だからとかスタッフだからとか、そういうのは関係ないので。みんなで1つのチームだし、たくさんの時間を一緒に過ごしていますから。本当に“野球の家族”だと思っています」。2軍戦でホークスがサヨナラ勝ちした時も真っ先にベンチを飛び出し、チームメートと喜びを共有。プレーが思い通りいかなくても、「フォア・ザ・チーム」の精神は揺らがなかった。

 シーズン中には通訳を伴わず、栗原陵矢内野手と2人で食事に行ったこともある。会話は日本語と英語が交じりあっていたといい、「日本語は聞く方がわかります。喋る方が難しいんですけど、自分の知ってる単語と単語を繋ぎ合わす感じで話しています。4割くらいは理解しているんじゃないですかね」とにっこり。ちなみに栗原の英語力については「僕の日本語の理解力と同じくらいじゃないですか。通訳でもやっていけると思いますよ」と高く評価していた。

 大きな期待を背負いながら結果を残せず、たった1年でホークスを離れることになった。それでも野球に対する真摯な姿勢や、温かみのある人柄でチームメートから愛されたウォーカー。これからの野球人生が光り輝くことを願っている。

(長濱幸治 / Kouji Nagahama)