チームの輪から外れて密かに流した涙 4年間練習欠席なし…ドラ2庄子雄大は“ポスト周東”

カメラの前でガッツポーズする神奈川大・庄子雄大【写真:福谷佑介】
カメラの前でガッツポーズする神奈川大・庄子雄大【写真:福谷佑介】

脚力はホークスでもトップクラス「周東や佐藤直と競えるレベル」

 次なる“スピードスター”として期待は大きい。ソフトバンクは29日、ドラフト2位で指名した神奈川大の庄子雄大内野手に指名挨拶を行った。担当の松本輝アマスカウトと共に同校を訪問した福山龍太郎アマスカウトチーフが「ウチでもトップクラスの、周東(佑京内野手)や佐藤(直樹外野手)と競えるレベルの脚力がある。トップスピードでスタートを切れる、まさにロケットスタートというような瞬発的な能力がすごく高い。走る姿は一瞬、速そうに見えないんです。でもタイムを見るとめちゃくちゃ速い」と絶賛する逸材。庄子自身も「1番の持ち味は足だと思う。将来的には盗塁王を争えるような選手になりたいです」と意気込んだ。

 横浜高から神奈川大に進んだ庄子は、1年春のリーグ戦から外野手で定位置を確保した。2年生の秋には遊撃手となり、神奈川大学野球リーグの8シーズンでベストナインを5度も受賞。50メートル5.7秒の快足を誇り、リーグ最多の通算116安打をマークした。守備面でも高い能力を発揮するなど、福山アマスカウトチーフは「正確なスローイングができる。ショートでも十分にやっていける」と高く評価している。

 野球人生の転機は高校2年の夏にある。ホークスで先輩となる近藤健介外野手の母校でもある横浜高では1年秋からレギュラーの座を掴み、2年春にはセンバツで甲子園にも出場。だが、腰の怪我の影響で、2年夏はスタメンどころか、登録メンバーからも外れることになった。

「春の終わりぐらいに怪我をして、野球が数か月できなくなりました。ポジションを譲るっていう形になったので、もちろん悔しかったです。怪我をしない体にならないと、プロにはなれないと感じたので、そこも転機になりました」。初めて長期間プレーできなくなる日々を味わった。スタンドで声援を送る悔しさを噛み締めるとともに、怪我をしないことの大切さに気づかされた。

 高校、大学と低学年のうちから試合に出場してきたことからも分かるように、その野球センスは抜群だ。1995年のドラフト4位で西武に入団した神奈川大の岸川雄二監督は、入学前の段階で庄子のポテンシャルを感じていた。「足の速さと走塁の上手さ、走塁勘って練習しても上限はあるんですよ。持って生まれた才能で、それを兼ね備えている。走塁に関しては何も言ったことがないです」。ただ足が速いだけじゃない。打球判断や走塁技術も含めて、高い能力を高校時代には身につけていた。

 大学で4年間指導してきた岸川監督には、庄子の印象深い出来事があるという。3年生だった2023年、リーグ戦で優勝を逃した時のことだ。

「去年、優勝を逃した時には人知れず泣いている姿を見ました。自分が強くあらなければいけない、人前で弱みを見せないようにしている彼のそういう瞬間を見たときに、チームのこともしっかり考えてやっているんだなって感じましたね」

 チームメートの前では気丈に振る舞っていたが、輪から離れたところでひっそりと涙を流していた。庄子は自身を「感情を出さないタイプ」というが、優勝できなかった悔しさや歯がゆさなど、さまざまな思いが溢れ出た。チームの敗戦を正面から受け止めた姿に、指揮官は成長を感じた。

 性格は真面目でストイックだ。岸川監督は「負けん気が強いんですよ。1年生の時から上級生に対して『もっとこうした方がいいんじゃないですか?』って臆せずに言っていました。外に遊びに行く、外食するっていうのもほとんど聞かない。夏場でも寝るときはエアコンを消して寝るぐらい体調管理もしますし、4年間、体調不良で練習を休んだことがないです。昔の人は『地味』って言うかも知れないですけど、自分が上手くなるために余計なことをしない。大谷選手ほどじゃないけど、そういう気質を持っています」と、その暮らしぶりを明かす。

「十分に(ホークスの)競争に入れますし、競争ができるイコール、チャンスはたくさんあると思います。来年の戦力の中で十分に1つのピースとしてやっていけるっていう判断をしております」と福山アマスカウトチーフは言う。あの周東も脚力を武器にチャンスを掴み、日本を代表する選手となった。庄子も持ち前のスピードを武器に輝く存在を目指す。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)