チームは4年ぶりのリーグ優勝を果たし、CSファイナルを迎えた。本拠地で勢いに乗る日本ハムを迎え撃つことになった。決戦前夜の15日、正木はどんな過ごし方をしていたのか。
「練習して帰って、何にもしていないですね。YouTubeを見たり……。でもバットを持って帰っていたので。カーテンを開けたら(窓が)鏡みたいに映るので、それ(素振り)は30分くらいしましたね」
重要な戦いを前に緊張を感じることもなく、しっかりと眠れた。やるべき準備だけを済ませ、あとは自分だけの時間を過ごしていた。
ルーキーイヤーだった2022年。チームは“あと1勝”が届かずに優勝を逃し、2位となった。CSファーストステージは本拠地で、3位の西武と激突することになった。「2年前はルーキーでしたし、何が何だかわからなくて。ただただ緊張している感じでした」。初戦を翌日に控えた10月7日の夜。正木はフードデリバリーサービス「Uber Eats」(ウーバーイーツ)を使って、西新にある飲食店の海鮮丼を注文していた。お店は、テイクアウト専門店の「魚丼」だった。
今季は80試合に出場して打率.270、7本塁打、29打点。6月21日に1軍昇格して以降は定位置を掴み、多くの面でキャリアハイの数字を残した。立場も年齢も変わり、迎えた2年ぶりの“CS前夜”。正木は何を食べたのか。
「15日の夜ですか……。あ、ポキ食べた、ポキ。マグロなんで、今年も海鮮でした!」
マグロやタコなどの魚介をぶつ切りにして、醤油やごま油であえた「ポキ」が“勝負メシ”になった。それもまた、家まで料理を持ってきてもらった。「今年もウーバーしました。ガチです。好きなんですよね、海鮮」と笑顔で語った。食事におけるルーティンはないというが、「勝負の前の日は、特に考えたりせずに肉を食べたかったら焼肉に行きますし、海鮮を食べたかったら頼んだり……。自分の好きなものを(食べる)って感じです」という。
16日の初戦では2回1死一、三塁で打席へ。有原航平投手と最多勝のタイトルを分けあった伊藤から先制の左前適時打を放ち、塁上では力強いガッツポーズも見せた。「1打席目からチャンスで回ってきて、すごく緊張しました。でも、これまでやってきた思いや自負もあったので。自信を持って打席に入れました」と胸を張った。シーズンでも大きな重圧を経験してきた24歳。2度目の短期決戦、その重みは身に染みてわかっていた。
「かける気持ちは必然的に大きくなります。チームの勝ちになんとか僕も貢献したいという思いでやっていますから。そこは自然と(ガッツポーズが)出ていました」
2年前のCSはファーストステージでは出番がなく、ファイナルステージでも5打数1安打に終わった。「今年は地に足をつけてできていますし、自分のスイングができているかなと思います」。お腹も心もしっかりと満たしている正木なら、大事な打席も託してもらえるはずだ。