中村晃が語る柳田と今宮の存在「2人がいなかったら」 苦しんだ1年…激白した“特別な感情”

ソフトバンク・今宮健太(左)と中村晃【写真:竹村岳】
ソフトバンク・今宮健太(左)と中村晃【写真:竹村岳】

今季を振り返って「柳田さんも健太も、しっかりやっているなって」

 鷹フルではソフトバンク・中村晃外野手への単独インタビューを5日連続で掲載します。2回目のテーマは「ギータと健太」です。柳田悠岐外野手と今宮健太内野手について「特別な存在」と語り、秘話を明かしてくれました。今季は個人成績が振るわない中で、同じ時代を戦ってきた2人に「救われた」と、胸中を激白しました。

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 盟友について語る表情に、照れはなかった。自信を持って「特別な存在」と言えるからだ。

 チームが4年ぶりのリーグ優勝を果たした今季、中村晃は101試合に出場して打率.221、0本塁打、16打点という成績に終わった。「個人的に思うのは、レギュラーとして優勝するのが一番充実感、達成感があるというか。そういう感じがするので」。山川穂高内野手らの獲得による余波を受け、今季は代打としての出番が多かった。目指すものはもっと上にあるからこそ、優勝を手にしても悔しい感情を隠すことはなかった。

「100%喜べるかと言われたら、難しいですよ。悔しさももちろんありますし。でも、チームが優勝するためにと思って、1年間やろうと決めていたので。そこに関しては達成できたのかなと。あとは自分の成績が良ければ、なおさら良かったのかなと思います」

 今宮は133試合に出場して打率.262、6本塁打、39打点。内野の要である遊撃手としてはもちろん、チームリーダーとして先頭に立ち続けた。柳田は5月31日の広島戦(みずほPayPayドーム)で右ハムストリングを痛めて4か月の戦線離脱。52試合に出場して打率.286、4本塁打、35打点に終わったが、小久保裕紀監督は若手に対して「まだまだ彼ら(柳田、近藤健介外野手)には敵わない」と表現していた。まだまだ頼もしいホークスの主力だ。

 2022年オフに松田宣浩内野手がホークスを退団した。同年9月8日に登録抹消となった際、松田が「多分、(1軍には)もう上がってこない」と退団の可能性を事前に伝えていたのが柳田、中村晃、今宮だった。「次代のホークスを引っ張っていくのはお前たちだ」というメッセージ。偉大な先輩が3人を認めた証だった。今季に関して、中村晃は「柳田さんも健太も、いつも通りかなと思いますけど。元気に、しっかりやっているなっていう感じ」と、淡々とした様子で印象を話した。そして、続けて口にしたのは2人への思いだった。

「あの2人って僕の中でも特別な存在なんです。同じ時期に試合に出るようになって、同じことを経験して、今に至るので。あの2人がいなかったら、ここまで野球ができていないと思います。なんか、野球の話とかはそこまでしないですけど、言わなくても通じ合っているところがあるんじゃないかなと、僕は勝手に思っているんですけど」

 初めて規定打席に達したのは中村晃と今宮が2013年、柳田が2014年だった。以降はそれぞれがタイトルを獲得するなど球界を代表する選手となり、何度も優勝に貢献。ともに常勝時代を築いた。「なんか、あまりしゃべりもしなかった時期もありましたよ。仲がいいとか、悪いっていう話じゃないんですけど。何なんですかね」と首を傾げるが、寄せている信頼は絶大。交わす言葉が多くなくても、互いへのリスペクトで成り立つような関係性だった。

 2020年から中村晃は選手会長に就任した。前任の柳田から受け取ったバトンで、2年間の任期を終えると、2022年から今宮に託した。その時期から会話が増え始めたといい、「3人とも、黙々と自分のことをやるタイプで、健太も成績を残していましたよね。ちょうど健太を選手会長に薦めた時くらいから話すようになったんですかね」と懐かしそうに振り返る。言葉によるコミュニケーションが増えたのだから、仲はより深まった。食事をする機会も少しずつ多くなっていった。

ソフトバンク・柳田悠岐(左)と中村晃【写真:竹村岳】
ソフトバンク・柳田悠岐(左)と中村晃【写真:竹村岳】

 中村晃は今季、背中を痛めて8月12日に登録抹消となった。柳田とともにリハビリ組で過ごした際も、会話は「ちょっとくらいですね」という。「2人ともやることやって帰っちゃうので。そこで話すとかはなかったですね。柳田さんは若い子と話したり、自分のトレーニングをする感じでした」。怪我をして、できることが限られているからこそ、それぞれ自分のことに集中していたそうだ。柳田が離脱してからしばらくは、中村晃が1軍で野手最年長だった。ギータの存在感は、やっぱり大きかった。

「やっぱりあの人がいるっていうのはチームとして安心感があります。名前(スタメン)に柳田ってあるだけでどっしりしたチームになる。存在感っていうのは、他の人に出せないものがあるなと思っています」

 今宮は今季、1度も登録抹消されることなく、1軍でシーズンを“完走”した。8月28日のオリックス戦(長崎)では、制球に苦しむ津森宥紀投手に「ああいう姿は見たくない」と苦言を呈した。言動で引っ張った姿に、中村晃も「声もかけますしね。僕もそうですけど、もともとあまり話さないタイプというか。でもそうやって自分が感じたことを後輩に話すのは大事なことだと思うので。素晴らしいなって思います」と学ぶことも多かったという。リーダーシップは人それぞれでも、今宮に心からのリスペクトを示した。

「健太なんかは“ザ・チームリーダー”だなって思います」

 互いにレギュラーとして活躍してきたからこそ、特別な感情を抱く。柳田がホークスの顔なら、今宮と中村晃はその“両翼”だ。苦しんだ2024年。2人の存在に「救われました。それは間違いないです」。照れることなくキッパリと言い切った。

(竹村岳 / Gaku Takemura)