ビールかけは「2本で帰った」 近藤健介が示した“けじめ”…歓喜の輪から外れた理由

ビールかけに参加するソフトバンク・近藤健介【写真:小池義弘】
ビールかけに参加するソフトバンク・近藤健介【写真:小池義弘】

会場にも松葉杖姿で登場…喜び合うチームメートと対照的な姿

 リーグ優勝したチームだけが楽しむことのできるビールかけ。心身ともにすり減るような戦いの日々に身を置く選手にとって、全てが報われる瞬間だ。ホークスが4年ぶりの優勝を決めた9月23日。誰もが美酒に酔いしれ、喜びを爆発させる中で、その輪をそっと外れたのが近藤健介外野手だった。

 同日のオリックス戦に勝利した直後、京セラドームのグラウンドに松葉杖をつきながら現れた近藤。ビールかけ会場にも同様の姿で参加した。周東佑京選手会長の音頭で始まった勝利の宴。「2本くらいやって、すぐに帰りました」。近藤が明かしたのは“けじめ”の思いだった。

 「治療に専念するというか。あまり立っているのも(患部に)よくなかったので。さっと帰りました」

 9月16日のオリックス戦で二盗を試みた際に右足首を痛め、「右足関節捻挫」の診断を受けた。自身が離脱してから1週間後に訪れた歓喜の瞬間。近藤が優先したのは、今を楽しむことではなく、先に備えることだった。

グランドで挨拶するソフトバンク・近藤健介【写真:小池義弘】
グランドで挨拶するソフトバンク・近藤健介【写真:小池義弘】

 シーズンを完走することはできなかったが、故障するまでの全129試合に5番打者としてスタメン出場し、リーグトップの打率.314、19本塁打、72打点をマーク。4年ぶりのリーグ優勝に欠かせない存在だったことは間違いない。歓喜の輪に加わる“資格”はもちろんあったにも関わらず、それを選ぶことはなかった。

「とりあえず怪我を治して試合に出られるようにすることが一番なので」

 現在はみずほPayPayドームでの試合前練習に参加し、バッティング練習を行うなどして患部の状態を確認している。3日には軽いジョギングもこなした。「しっかりと期待に応えられるようにやっていきたいです」。全ては16日から始まるクライマックスシリーズ・ファイナルステージに出場するためだ。

 野球選手である以上、グラウンドに立って歓喜の瞬間を迎えてこそ、美酒を心行くまで味わえる。「CS、日本シリーズとしっかり試合に出て、今度こそビールかけを最後まで楽しみたいですね」。さらなる戦いの先にある頂点にたどり着いた時こそ、本当の笑顔が見られるに違いない。

(長濱幸治 / Kouji Nagahama)