澤柳はロキテクノ富山から昨年ドラフト5位で入団した24歳右腕。今季は11試合に登板し、2勝1敗、防御率3.38の成績を残している。8月1日の楽天戦(東京ドーム)で3回途中からマウンドに上がり、プロ初勝利を挙げた。
「怪我した後、すぐに話していました。(8月10日の楽天戦で)肘を怪我した次の日にドームで会って、その時に『多分これ手術だな。そうなると再来年の頭からになっちゃうよね』って。新人みんなで一緒に頑張りたいなって思っていたところでしたし、自分もすごく悔しかったですね。本人が一番悔しいと思うんですけど、2人でまたこれから頑張ろうって時に怪我しちゃったので」
澤柳の手術が発表された9月4日は、日本ハム戦だった。大山はこの試合の9回に、松本裕樹投手のアクシデントで緊急登板するも、3連打を浴びるなど3失点。ベンチでは大粒の涙を流し、自身にとっても忘れられない日になった。「自分のことでいっぱいいっぱいでした」と、澤柳の手術を知ったのは少し後だった。そんな22歳右腕から、かけられる言葉は少なかった。
「難しかったです、言葉は。でも、『結構結果が出てきて、いいところだったから悔しいですよね』みたいな感じの話をしたんですけど。サワさんも『いや、ほんとだよね』って……」
術後はまだ顔を合わせることはできていない。「手術前に1度、移動の時のタイミングで新幹線の駅で会って、『入院する前に髪切りに行かないと』って言っていました。その時もいつも通りでした。自分が後から駅に来たんですけど、『サワさ~ん』って言ったら、『おっす、おっす、おっす。あぁ凌ちゃん移動か、そっか~』って」。同期に落ち込む表情を見せるようなことはなかったという。
大山が涙した4日の日本ハム戦後には、澤柳からLINEが届いていた。「『大丈夫? 次また頑張れ』ってきていたので、大丈夫よ。頑張ろうねって送りました」。術後の澤柳は、心身ともに苦しい時期だったはずだ。そんな中でも、同期の悔しさを分かち合おうとする姿があった。
岩井は澤柳が手術を終えた後に会話をしたという。「(手術から)戻ってきた時に寮で話しました。『どんな感じだったんですか?』って聞いたら、『肘から血が出てくる感じがした』って言っていました。落ち込んでいたのかもしれないですけど、普通に、いつも通りの感じで話してくれました」。岩井に対しても、澤柳は普段と変わりない接し方をしていた。
「サワさんは背中で引っ張っていく感じ。あの人すごいので。結果で引っ張っていく、そっち系の人です。頼もしいです」と岩井は言う。澤柳は今、苦しいリハビリ生活を必死の思いで過ごしている。少しでも力になるように――。岩井と大山も、頼もしい姿を見せたい。