「スーパーサブ」川瀬が9年目にして立てた“スタートライン”
ソフトバンクの川瀬晃内野手が、鷹フルの単独インタビューに応じた。第2回のテーマは「主力としての自覚と新たに芽生えた悔しさ」。今季は開幕からここまで1軍の舞台で戦い続けている26歳。小久保裕紀監督をはじめ、首脳陣から厚い信頼を受けている中で、支えとなっている言葉を明かした。
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今季、内野の全ポジションで出場するなどユーティリティとして欠かすことのできない存在となっている川瀬。昨季は6月に左膝の負傷で一時戦線を離れることはあったが、今季は開幕から1度も出場選手登録を抹消されることなくプレーを続けている。4月27日の西武戦ではプロ初のサヨナラ安打を記録。充実の1年となっていることは間違いない。
「途中からの出場が多いんですけど、いいところもあり、悪いところもあり……。それは毎日野球をしていたらあるんですけど。もっと必要とされるような選手になりたいと思っているので。出た時にしっかりと自分の存在感を出せるようにというのは常に意識していますね」
今季から従来の背番号「00」を「0」に変えて臨んでいる。昨オフの契約更改では「ホークスのショートは川瀬晃だという時代を作りたい」と、レギュラー取りに並々ならぬ決意を見せていた。9年目のシーズン、ここまでをどのようにとらえているのか。川瀬の口から出てきたのはまぎれもない本音だった。
「今年が始まるときにはレギュラーを取りたいと色んな所で言ったんですけど。(シーズンが)始まってからは、そうはうまくいかなくて。自分の中で悩んだこともありましたけど、監督だったり(奈良原浩)ヘッドだったりが『任せた』という言葉をかけてくださるので。正直、やっぱりスタメンで出たいという気持ち、悔しさはもちろんありますけど、腐らずにもっともっと必要とさせる選手になりたいと思いますね」
現状で満足することはない――。言葉から川瀬の思いは伝わってきた。102試合に出場した昨季は先発出場が41試合だったのに対し、今季は出場81試合のうち、先発は17試合。遊撃手の今宮健太内野手、三塁手の栗原陵矢内野手ら主力が離脱することなくプレーしていることの裏返しでもあるが、あくまで定位置奪取を目指す川瀬にとってはもどかしさを感じる現状ともいえる。
本当の意味での1軍戦力となったからこそ生まれた新たな悔しさの一方、主力としての責任感は増している。「本当に去年、おととしは隙があったからこそああいう負け方をしたと思います。だからこそ今年はこの位置にいるからこそ隙を見せちゃいけないと自分でも強く思っているので。どういう状況であろうが、自分が試合に出た時にしっかりと結果を出せるようにと常に考えてますね」。
川瀬への信頼感は小久保監督の発言からも分かる。昨秋のキャンプ中には「自己犠牲のできるヤツがいないと試合には勝てない。そういうことをできるのはお前しかいないから」と声をかけ、今シーズン中にも「彼は目が合った時にいつでも行けるのは分かっているので。その安心感はあります」と目を細めた。首脳陣の思いが形になったのが今季の“フル1軍”だ。
川瀬本人にもその信頼は十分に伝わっている。「『お前が途中から守備固めとかで出てくれると、こっちも本当に助かっている部分があるし、パッと(行けと)言ってすぐに試合に出てくれる選手はなかなかいない』との言葉もいただけたので。本当にその言葉だけで救われているところはありますね」。
9年目にして築いた自らの立ち位置。それでも、見据えるのはさらなる高みだ。スーパーサブで終わるつもりは毛頭ないが、与えられている仕事を全力でこなさない限りは未来もない。川瀬の挑戦は、ようやくスタートラインに立ったところだ。
(長濱幸治 / Kouji Nagahama)