来日1年目の昨季に味わった“どん底”…ヘルナンデスが左腕を振り続ける理由
“歓喜の秋”を迎えるため、左腕を振り続けている。2位ロッテに10ゲーム差をつけ、前半戦を首位ターンしたホークス。リーグトップの救援防御率2.40を誇るブルペン陣の大黒柱となっているのが来日2年目のダーウィンゾン・ヘルナンデス投手だ。
今季は27試合に登板し、3勝1敗11ホールド、防御率2.00。奪三振率は脅威の「16.33」(27イニングで49奪三振)で、シーズン初登板から27イニング連続奪三振はプロ野球新記録という活躍ぶりを見せている。
そんな左腕も昨季は暗闇の中にいた。7月末に入団したものの、登板はわずか1試合に終わった。慣れない異国での生活に加え、フラストレーションが募る日々。ヘルナンデスを救ったのは、当時2軍で指揮を執っていた小久保裕紀監督だったという。
「昨年も今年と同じように、投げている感覚はすごくよかったけど、自分を知ってもらうまでの時間がなかった。正直、なんで自分を日本に連れてきたのかがよく分からなかった」
補強期間ぎりぎりで来日した昨季、8月下旬に訪れた初登板では2つのアウトしか取れず、2失点を喫した。その後は2軍戦での登板を重ねたが、レギュラーシーズンでの出番は訪れなかった。崩れそうだった精神面をサポートしてくれたのは、当時の2軍監督、小久保監督だった。
「小久保監督には本当にすごくよくしてもらった。『元気?』とか『いいピッチングを続けてくれているね』とか。すごくリラックスすることができた」。何気ない会話の中でも、自身を気にかけてくれていることが分かった。右も左も分からない生活を送っていた左腕にとっては、それだけで十分だった。
迎えた今季、開幕前に右太もも裏を痛めて4月末の1軍合流となったが、昨季の悔しさを晴らすかのように好投を続けている。高いモチベーションの背景には、どうしても実現したい「願い」がある。
「とにかく優勝して小久保監督を胴上げしたいし、抱きつきたい。どんな形でも感謝を伝えたいね」。異国の地でどん底から救ってくれた恩人に報いるため、後半戦もフル回転する覚悟だ。
(長濱幸治 / Kouji Nagahama)