1学年下の前田悠伍から「学ぶこともすごく多い」 大野稼頭央の成長に“大先輩の動画”

ソフトバンク・大野稼頭央【写真:上杉あずさ】
ソフトバンク・大野稼頭央【写真:上杉あずさ】

7月17日の3軍戦、3イニングで7奪三振…自身も驚き「7個ですか!?」

 迫力のある投げっぷりに、期待感が膨らむ。2年目の大野稼頭央投手が新たな武器を身につけた。奄美大島の大島高校から2022年ドラフト4位で入団した左腕。春先は体作りに専念してきたが、4月後半に行われた3軍の韓国遠征で今季初登板。徐々に段階を上げ、レベルアップした姿も見せている。

 7月17日にタマスタ筑後で行われた四国IL・香川との3軍戦では、6回から3番手として3イニングを投げ、1安打無失点、7奪三振と圧倒した。「真っすぐがきょうは走っていたんで、それが1番よかったかなって思います」。この日の最速は144キロ。自己最速は146キロだが、その球速を上回っているかと思わせるほど、伸び上がるような真っすぐを投げ込んでいた。

 1イニング目の6回は3者連続三振、7回は1つの三振を奪い、3イニング目となった8回も3者連続三振。大野本人でさえ「7個ですか!?」と驚いていたが、これこそが、成長を表していた。5つの奪三振は真っすぐ、残る2つは追い込んでからのフォークを決め球に、全て空振りで仕留めた。

 昨季まではスライダーとカーブが変化球の中心だった。フォークは「(使えるようになったのは)今年に入ってからです。ずっと投げてはいたんですけど、試合で使えていなかったので」。実戦登板に向けて段階を上げていく中で「自分の中で試行錯誤しながら、試合で投げれるようになってきた感じです。だいぶ(投球の)幅も広がったし、先発をやっていく上では、落ちる球が必要になってくるので、フォーク覚えられたら結構いいかなと思っていました」と取り組んできた成果だった。

 改良のキッカケは、YouTubeと“いまどき”だった。「変化球は全部、YouTubeから盗んで、というか真似して投げています」という。YouTubeでホークスの先輩でもある千賀滉大投手(メッツ)がお化けフォークの投げ方について解説している動画を見た。大野は「それを真似して投げたら、結構落ちたんでこれでいってます」と笑う。試行錯誤しながらではあるが、新たな武器となりそうだ。

メッツ・千賀滉大【写真:ロイター】
メッツ・千賀滉大【写真:ロイター】

 春先、実戦登板を遅らせたことで、身体作りはもちろん「自分の試したかったこととか、フォークもそうですし、新しくカットボール覚えたりとかそういう時間も作れたので、すごくいい期間だった」と、ポジティブに時間を過ごした。焦ることなく、土台作りから地道に取り組んできたことにも効果を感じていた。

 6月8日のウエスタン・リーグのオリックス戦では2軍公式戦に初登板した。中継ぎとして3回2/3を投げて3安打1失点。4四死球には「ちょっと反省点が多い試合ではありました」と振り返る。6月20日の同リーグの阪神戦にも登板し、1回1安打無失点。2軍戦で先発する予定もあったが、天候不良で流れてしまった。「今年の目標は2軍で先発として回って結果を残すこと」と掲げており、着実にそこに近づいてきている。

 今季は、1学年下で同じ高卒左腕の前田悠伍投手がドラフト1位で入ってきた。注目度も高く、大野よりも早く2軍デビューも果たした。「僕があっち(前田悠伍)の刺激になっているか分からないですけど、あっちから得ることだったり、学ぶこともすごく多いです。一緒に練習するのもそうですし、いろんな話もするんですごく勉強にはなっています」と語る。

 まだまだ線の細さや出力の面でも伸びしろはあるが、期待感が膨らむ。現時点でどこまでやれるのか、後半戦2軍でもっと見てみたい面白い存在だ。楽しみな若手左腕がまたひとり、頭角を現してきた。

(上杉あずさ / Azusa Uesugi)