【連載・近藤健介】1球で見抜いた栗原陵矢の“履き違え” 「良さ消えたら意味がない」

ソフトバンク・近藤健介(左)と栗原陵矢【写真:竹村岳】
ソフトバンク・近藤健介(左)と栗原陵矢【写真:竹村岳】

月イチ連載の第2回目 前編のテーマは「栗原を復調に導いた慧眼」

 ホークス・近藤健介外野手の月イチ連載。第2回は前、後編でお送りします。前編のテーマは「栗原陵矢を復調に導いた慧眼」です。4月終わりで打率.213、0本塁打と苦しんでいた栗原選手ですが、ある助言をきっかけに5月は自身初の月間MVPに輝くなど、一気に復調を見せました。どのようなやり取りがあったのか。鷹フルユーザーだけに明かしてくれました。

 鷹フルをご愛読の皆さま、お久しぶりです! 2回目の月イチ連載となりました。今回はクリについて話したいと思います。彼が5月の月間MVPを受賞した際に「近さんとの会話がきっかけになった」と話していたのは記事で見ました。その時のやりとりや、僕が栗原陵矢という打者をどう見ているのか。ここで話させてもらえればと思います。

 あれは5月1日の楽天戦でした。代打で出場したクリが酒井(知史)投手の初球、フォークをファウルにしたのをベンチから見て、感じたことがありました。「次に真っすぐが来てもフォークが来ても打てないだろうな」。2球目は真っすぐを空振り。最後はフォークを当てて、セカンドゴロに終わりました(結果は二野選)。

 試合後、居残りで打撃練習をしていたクリに話したのは、僕がこれまで見てきた栗原陵矢というバッターの印象でした。日本ハム時代には敵として、侍ジャパンではチームメートとして戦った彼のイメージはインコースに「ツボ」があって、ライトへ綺麗に引っ張れる、一発の怖さを秘めたバッター。その姿とかけ離れたように見えたからです。

 クリの思いはよく分かります。「バッターとして成長するために、レフト方向にも強い打球を打ちたい」。もちろん、逆方向に打てるのは大切だと思うんですよね。でも、それで良いものがちょっとずつなくなってる。変化にリスクはつきものですけど、やっぱり結果も出ていなかったですし、まずは「打てるボールをしっかり打つ」ことがバッティングの原点だと僕は思っているので。そういう思いからスイング軌道の話はしました。

 僕自身は「逆方向に打球がいってる」っていう感覚。逆方向ありきじゃない。基本はセンター中心に(打球が)左右に飛ぶという感覚です。強い打球を打つには、やっぱりセンターから右方向だと僕は思っている。その中でレフトにいく。逆方向へのホームランもありますが、その考えは変わらないままです。

ソフトバンク・近藤健介(右)と栗原陵矢【写真:竹村岳】
ソフトバンク・近藤健介(右)と栗原陵矢【写真:竹村岳】

 どの選手でも逆方向を狙うと、どうしてもボールに対して「受け気味」になる。それで真っすぐも弾けない、変化球も全部追っかけてしまうっていうスイングだなと僕には見えたんで。そこはクリに言いますよね。

 そういう意味では「履き違え」じゃないですけど、成長段階の中で(自分で)難しくしていたんじゃないかなと。考え方や技術面もアドバイスしましたし、本人もやりながら「しっくりくる」とは言っていたので。それは良かったのかなと思います。

 クリは今、3番打者として打線のキーとなる存在だと思いますし、僕の言葉が復調のきっかけになったのなら、うれしい限りです。月イチ連載の後編では、ケガで離脱するまで不動の3番打者としてチームを引っ張っていたギーさん(柳田悠岐選手)について、お話ししたいと思います。

(聞き手・構成 長濱幸治 / Koji Nagahama)