4日の2軍戦で笹川、正木ともに2安打で存在感をアピールした
チームが「緊急事態」を迎えた中でも、自分の名前が呼ばれることはなかった。「悔しさはやっぱりありますね」。そう口にしたのは2軍でプレーを続ける若手外野手たちだった。
5月31日の広島戦(みずほPayPayドーム)、チームの大黒柱である柳田悠岐外野手が走塁中に右ハムストリングを負傷し、「右半腱様筋損傷」で全治4か月と診断された。一大事を迎えた球団の決断は、貴重な支配化枠を1つ使うことだった。佐藤直樹外野手の支配下復帰、そして即1軍昇格。その知らせを聞いた笹川吉康外野手は正直な思いを明かした。
「支配下(に外野手)がいる中で、育成選手を支配下にして(1軍に)上げたという事実に悔しさはあります」。公称193センチ、95キロの恵まれた体格による豪快なスイングで「柳田2世」との呼び名もある22歳。「自分の実力不足だし、『なんで』とは思わなかった。一つギアが上がったというか、スイッチが入ったって感じですね」と闘志を燃やした。
笹川にとって、自主トレで師事したこともある柳田にはもちろん特別な思いがある。「怪我をしたと聞いて、かなりショックでした。師匠なので。連絡しようと思ったんですけど、聞いた感じだと大丈夫(軽傷)じゃないということで、ちょっと遠慮してます。柳田さんがどういう気持ちかわからないので」。
師匠を喜ばせるための明確な目標もできた。「自分が1軍に上がって、柳田さんの帰りを待てるように。『おかえりなさい』と言えたら一番いいですね」。落ち込むことなく、前向きな気持ちでプレーを続ける覚悟だ。
思いは3年目の正木智也外野手も同じだった。「悔しさはありますけど、成績を見れば妥当かなと。そこは自分が成績を出せていなかっただけなので。ここからまた追いつけるように頑張りたい」と真剣な表情で前を向いた。
現在の1軍では、自身と同じ慶大出身の柳町達外野手が結果を残している。「やっぱりすごいなと思いますし、2軍でもずっと腐らずやっていたのは姿勢で感じていたので。見習いながら僕もやっていきたい」。2学年上の先輩も開幕からチャンスがもらえず、2軍でプレーを続けていた。だからこそ、弱音など言っていられない。
慶大出身でいえば、ドラフト3位ルーキーの廣瀨隆太内野手も4日の中日戦(バンテリンドーム)でプロ初安打を放つなど、1軍で必死にしがみついている。「状態はどんどん上がってきているので。いつ呼ばれるかわからないですけど、そこに向けて準備していくだけです」。その言葉通り、同日のウエスタン・リーグ中日戦(みずほPayPayドーム)では2安打を放った。同じく笹川も2安打をマーク。チームの危機を救うべく、ファームでも若鷹は必死でバットを振り続ける。
(長濱幸治 / Kouji Nagahama)