サヨナラ勝ちの直前…チームの絶好調ぶりを示した“ワンシーン”
「『頑張ったから勝てるっしょ今日。オラオラオラオラ!』みたいな」。自身の興奮ぶりを振り返ったのはリチャード内野手。背中に手を置かれながら言葉をかけられたのは大関友久投手だった。19日の西武戦(みずほPayPayドーム)で、首位を独走するチームの雰囲気を如実に表したワンシーンがあった。
1点を追う土壇場の9回1死二塁。柳田悠岐外野手が右前に打球を運び、二塁走者の周東佑京内野手が同点のホームに滑り込んだ。大いに盛り上がるホークスベンチの中で、戦況を見守っていた大関の隣にいたのがリチャードだった。
「見とってくださいよー。絶対勝てるっすよ」。リチャードなりのねぎらい方だった。この試合に先発した大関は初回に1点を失ったものの、尻上がりに調子を上げて8回まで1失点で投げ切っていた。柳田の一打が大関の黒星を消した形となった。
その時の心境を大関が明かした。「(リチャードは)『本当にゼキさんが粘ったから、こういう展開になったんでしょ』って言ってくれて。野手の選手からそう言ってもらえるのはすごくうれしかったし、チームがいい雰囲気だなと感じました」。最後まであきらめず勝利を狙う空気が今のチームには満ちている。
「逆転してほしいと願ってベンチで応援していたので。周東さんが先頭で出た時、一気に流れが来たんじゃないかなと思いましたし、盗塁が決まった時にこれは勝てるかなと」。大関の予感通り、試合は近藤健介外野手のサヨナラ打で劇的な勝利を収めた。
リチャードと大関。育成出身という共通項こそあれ、入団年も年齢もポジションも異なる2人だが、リチャードは「仲いいっすよ。めっちゃ野球のこと詳しいです」と笑顔を見せた。大関も「仲はいいと思います。(年齢は)2つ下ですけど、普通に話します」と応じた。
大関が口にしたのはリチャードの“気配り”だ。「マイペースですけど、結構ピッチャーの気持ちを気にかけてくれる。守っているときも、ベンチにいるときもそう。野手の気持ちも伝えてくれて、普通に野球の深い話ができる関係ですね」と明かした。
サヨナラ勝ちの直前に見えた些細な瞬間に、リチャードと大関の浅からぬ関係性が垣間見えた。驚異的な強さを見せるホークスに流れる雰囲気が凝縮された瞬間だった。
(長濱幸治 / Kouji Nagahama)