春季キャンプを宮崎のB組で迎えた山下だったが、第3クールから筑後のC組へ
愛情のこもった喝だった。福岡・筑後市のファーム施設「HAWKS ベースボールパーク筑後」で行われているC組の春季キャンプ。ある日の練習中に斉藤和巳4軍監督に呼ばれたのは、2年目の山下恭吾内野手だった。肩に手を回され、ほんの数分のことではあったが、遠目に見ても熱い話をされているのが分かった。
2022年の育成ドラフト2巡目で指名され、福岡大大濠高から入団した山下は今季が育成2年目になる。広角に打ち分けられるバットコントロールと安定した守備が魅力。1年目の主戦場は4軍だったが、離脱者が相次いだ9月には2軍でいきなり結果を残した。
今春キャンプでも宮崎のB組スタートを勝ち取り、首脳陣からの期待の高さがうかがえたが、藤野恵音内野手とともに第3クールから筑後へ。2クール限定の宮崎キャンプで、その後はC組で汗を流している。斉藤4軍監督に呼ばれたのは、そんな筑後での時だった。
「良くも悪くも目立っているから、しっかりやれよ」
山下は斉藤4軍監督からかけられた言葉をこう明かす。「最初は何言われるんやろうって思ってビックリしたんですけど……。斉藤監督から見て『ここで満足するんじゃなくて、もっと上を目指せ』みたいな感じで。『良くも悪くも目立ってるから』って言われました」。
山下の将来に期待しての言葉だろう。C組の中で光る一方で、まだ残る物足りなさ。その両方を斉藤4軍監督は感じたのだろう。山下は「やらないといけないな」と奮い立った
宮崎から筑後に戻って実感したことがある。「筑後に帰ってきて思ったのは、1軍、2軍の人たちの方が自主練とかをめちゃくちゃやっているって感じました。だから、それ以上にやらないと上には上がれない。そこはこっちに帰ってきてからも意識して、自主練とかに取り組むようにはしています」。これまでも十分にやっているつもりだったが、1、2軍の選手たちの姿を目の当たりにして気付かされた。
「数をこなさないと質を求められないので、まずは数というところで今やっています」。宮崎に行ったからこそ感じられたその差。筑後への帰還は悔しかったが、宮崎で感じたことを今に生かしている。
「筑後だと気を遣わず、何でも使い放題で出来るので、宮崎より自主練習の質というか、やりたいことができていると思います。今の自分に満足せずに筑後でやらないといけないなって思っています」
宮崎での経験と斉藤4軍監督からの言葉が気持ちを昂らせた。「前向きな感じの話だったので、それは嬉しかったし、これからの自分に生かしていかないといけない。『それまでだったか』って思われたくないので、頑張ります」。斉藤4軍監督の期待を裏切らないような姿を見せたい。まずは、与えられたところで結果を残し、2軍に定着して結果を残すのが目標だ。
(上杉あずさ / Azusa Uesugi)