オフの自主トレは、8割が身体作りに充てられている。ソフトバンクの大関友久投手はこのオフ、7キロの増量に成功。そこから2キロ落として現在はちょうど100キロ。週に1回は体組成計で計測しながら開幕に向けて体重を管理しながら「大体2回トレーニングして、2回練習して、1日休んでみたいな繰り返しです」と精力的に汗を流している。
もともと身体を大きくしやすい方だと語る大関だが、それでもこのオフの間で7キロ増やすというのは簡単なことではなかった。「トレーニングをまずやって、ひたすらご飯を食べたりとか。あと、栄養。炭水化物で増やすのか、脂質を増やすのかとか、いろいろ試しました。なかなか苦労したんですけど、増やし方は覚えたな、みたいな感じですね」と振り返る。
筋肉の元になるタンパク質はしっかりと摂りながら、カロリーを糖質で稼ぐのか、それとも脂質にするのか……。筋肉量が増えづらくなってきた時に、なにをどう摂取したらいいのか……。日々、試行錯誤を繰り返してきた。そこで得られた経験と知識は「シーズン中に(体重を)キープする上でも使えるかなと思います」と、1年を通して戦う上でも武器になりそうだ。
現在は1日4食を中心に、サプリメントやプロテインで栄養を補給している。「増量する上で1番効果的だったメニュー」を問うと、返ってきた答えは「卵かけご飯です」。ニヤリと笑いつつ「米を食べるのがどんどんつらくなってくる、咀嚼がしんどくなってくるんですよね。卵かけご飯は消化がそんなにいい方じゃないと思うんですけど、結構カロリーは稼げたり、必要な栄養が卵はすごく高いんで、結構使っています」と語る。
“大関流TKG”はご飯300グラムに卵2つと醤油を少々。4食で300グラム、300グラム、300グラム、400グラムと食べ、1日で米を約8~9合平らげていることになる。「アスリートとして、筋肉量が多いっていうのは悪いことじゃないので、土台を作るという意味では、球速もそうですし、怪我をしない身体を作るって意味でもそうですし」。プロの世界で戦う大事な身体と日々真剣に向き合っている。
球速に関しても明確なイメージを持っている。「出力が出るか出ないかギリギリのところで戦う、みたいなことはしたくなかった。今年は常に余裕を持って、出力には余裕がある状態でと考えています。8割ぐらいで去年の9割ぐらい出せたら、かなりスタミナとか怪我(しない身体)とかを考えても、余裕が出てくるかな」。昨年10月から始めた肉体改造は筋肉量にも成果が表れている。43キロ台だったのが、3キロ以上増えて46〜47キロほどになったという。
もともと、同等の筋肉量があったが、2022年に左精巣がんを患ったこともあり、ここ2年はコンディション面での苦労は尽きなかった。筋肉量が落ちたことで球速も低下。間違いなく影響は出ていた。だからこそ、このオフ、しっかり自分と向き合って身体作りに取り組めたのは貴重な時間だった。
年末年始は茨城県の実家にも3日ほど帰省した。大関家には「お正月は男が(料理を)作る」という“ルール”があり、兄が手料理を振る舞ってくれたそう。大関自身は「ちょっと起きられなくて……」と料理する側には回らなかったが、「(兄の)お雑煮とプロテイン」で、栄養も愛情も補給してきた。
昨年は初めて開幕投手の大役を務めた。ただ、体調不良での離脱もあって、シーズンを通して活躍することは出来なかった。「去年はもう本当に仕上がりが早すぎたというか、その分いいスタートは切れたんですけど、引き出しとかが不足してて、中盤苦しんだので。ちゃんと1年間計算しながら、焦ってものんびりしててもよくないと思うので、ベストの調整をして、ベストのタイミングで調子を上げていけるようにやりたい」と、シーズン全体に視線を向けている。
1度見た景色だからこそ、開幕投手に特別な思いはある。ただ、今年の立ち位置も分かっている。「去年の実績とか、チームとか監督とかが納得した上で、そういう人たちが決めるところだと思うので、今年は自分ではないとも思っています。でも、何がどうなるかわからないので、自分の状態をしっかり上げていきたいと思っています」。自分の現在地を冷静に見つめつつ、静かに闘志は燃やし続けている。