伝える時期にも、伝え方にも明確な“意志”が詰まっていた。ソフトバンクの藤井皓哉投手、松本裕樹投手は来季もリリーフとして起用されることになった。8日、投手陣が行っているファーム施設「HAWKS ベースボールパーク筑後」での秋季キャンプで、倉野信次1軍投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター(投手)が「(藤井と松本は来季は)中継ぎです。それぞれに話をしています」と明言した。
藤井は今季、先発に転向して開幕を迎え、6月半ばまでに9試合に先発して5勝(3敗)をマーク。脇腹の肉離れから復帰するタイミングでリリーフに配置転換となり、中継ぎとしては25試合に投げた。松本は今季、シーズンを通じてリリーフで投げ、53試合に登板。2勝2敗25ホールド、防御率2.68をマークして勝ちパターンの一角を担った。
特に、シーズン途中にリリーフに配置転換となった藤井自身は先発の希望も持っていたが、倉野コーチは「来年また先発に挑戦するということはない。それは藤井も理解しています」と語る。その上で、後半戦で勝利の方程式として投げていた藤井、松本の2人に関して「チームが優勝するためには、あのピースは絶対に外せないと考えています」と全幅の信頼を寄せた。
今季は中継ぎで登板を重ねた大津亮介投手に対しては、すでに小久保裕紀監督からも来季は先発になることが伝えられている。「ほとんど(先発か中継ぎ)どっちかなという選手に関しては伝え終わっています」と倉野コーチ。まだ、秋季キャンプ途中の11月上旬という段階で、早々に多くの投手に来季の構想を伝えているという。
今年レンジャーズのマイナーリーグでコーチを務めていた倉野コーチはその意図をこう明かす。
「オフシーズンって11月、12月、1月の3か月で、もうオフシーズンは始まっているんです。2月1日の時点で(役割を)言っていては遅いんです。2月1日にどういう状態で来るのかっていうのは、今取り組み始めないと間に合わない。当たり前の時期と思っています」
それぞれの役割に備えるためには、2月になってから構想を伝えていたのではあまりにも遅い。本格的なオフに入る前に考えを伝え、2月までの期間を、来季に向けた準備期間にしっかり充ててもらう。最善の準備を尽くすため、そんな狙いが伺える。
伝え方にも倉野コーチなりの考えが込められていた。藤井にしろ、松本にしろ、それぞれを個室に呼び、星野順治コーディネーター(投手)も交えて、腰を据えて役割、首脳陣の考えを伝えた。練習の合間やグラウンドではなく、あえて部屋に呼んで言葉を交わし、伝えたことに意味があるという。
「3人でちゃんとした空間で話しました。空間って大事なんで。そこら辺の立ち話でするのと、ちゃんとした部屋で話をするのとでは響き方が違う。オフィシャルで伝えるのと、雑談で伝えるのは全く違うので、その辺も考えています。言葉のチョイスであったりも考えなければいけない」
伝えるシチュエーションであったり、かける言葉にもしっかりと意識を払う。そこまでしっかりとマネジメントを考えるのには、倉野コーチなりの「とにかく僕は選手に『来シーズンやるぞ』っていう気持ちを持ってもらえるように考えて、星野と2人でやっています」という思いがあるという。
早くも来季の構想に向けて動き始めている小久保ホークス。4年ぶりのリーグ優勝へ、鍵を握る倉野コーチは細部まで気を配りつつ、投手陣の再建を図っていく。