凡ミス連発で「元気がない」 井上朋也が2軍戦で1試合2発…3軍降格で突きつけられた課題

広島2軍戦で本塁打を放ったソフトバンク・井上朋也【写真:竹村岳】
広島2軍戦で本塁打を放ったソフトバンク・井上朋也【写真:竹村岳】

「今年、来年で活躍しないとやばい」…危機感を募らせる他球団の同級生

 1か月の間で、自分自身を向き合ってきた成果が表れた。ソフトバンク2軍は6日に行われたウエスタン・リーグの広島戦(タマスタ筑後)で13-3で快勝した。「6番・一塁」で先発した井上朋也内野手が、2本塁打を含む3安打4打点の活躍。このカードから2軍に合流したばかりの若鷹が、打線を引っ張った。3軍で過ごした1か月で、思い出した気持ちがあったという。

 まずは、5回。打線が4点を奪って逆転し、なお2死走者なしの場面で、育成右腕の行木の148キロをバックスクリーンにまで運ぶ4号ソロを放った。さらに、8回1死一塁、マウンドには、2017年にシーズン15勝を挙げた薮田。フルカウントからの7球目を右中間に弾き返し、再びオーバーフェンス。16安打13得点の快勝劇の中心に立ってみせた。

 4日の同戦では3打数無安打に終わったが、5日には3安打1打点。パンチ力が持ち味ではあるがセーフティバントで出塁するなど、とにかく結果へとつなげた。6日の試合で小久保裕紀2軍監督が評価したのは、6回2死三塁の場面での左前適時打。点差を3点にまで広げ「展開的にも大きかった」と称えた。2軍に合流していきなりの快音は、間違いなく首脳陣の目に止まった。

 今季はウエスタン・リーグでチーム2位の68試合に出場。2022年8月には腰の手術を経験したが、試合数を重ねていることが何よりも順調という証だった。しかし「2カードで3、4個エラーをしてしまって……。エラーの仕方も凡ミスみたいな、ボーンヘッドが多かった」と、7月上旬に3軍降格を告げられた。結果以上に首脳陣が見逃せなかったのが、ミスをした後の姿勢だったようだ。

「本多(雄一)コーチ(2軍内野守備走塁コーチ)に『元気がない』って言われました。(エラーは)自分では気にしないようにしていたんですけど……」

 小久保2軍監督は、こう補足する。「打っている時と打っていない時、あまりにも守る姿、集中力が違うので。打てない時に守りのエラーが続いていたので、本多コーチの方から『このまま置いていても彼のためにならない』っていうことで」。首脳陣の目には、気持ちの波が大きく映ったことは確かだった。順調に試合数を重ねさせていたところだったが、降格を告げることを決めた。

 約1か月間の3軍生活。四国への遠征はバス移動で、「ホテルも2人部屋とかでした」。昨季は腰の手術もあったが2軍での経験も積んでいただけに、本格的な3軍での時間は1年目以来。自分の中で、改めてハングリー精神が芽生えたことも認めた。守備面でも「最後の1試合、送球でエラーがあったんですけど、それ以外は全部さばけて自信にもなりました」と、胸を張って2軍に帰ってきた。

 井上にとって何よりの収穫は、これだけの試合数を重ねられていること。腰の手術明けということもあるが、「『これをやっておけばなんとかなる、っていうのを作っておいた方がいい』と小久保監督にも言われました。まずは、それを見つけたいです」。調子の波を小さくするためには、一定数の出場機会は確保して、課題を自分自身で把握しなければいけない。目的意識を持ってグラウンドに立つことで、毎日が発見の連続だった。

「バッティングも守備もなんですけど、シーズンをやっていって疲れもたまって。体も思うように動かなくなっていく。そこでどうすれば、体が重くならないのかとか、それが今年はうまくできていなかったので。絶対に波はあると思うんですけど、こう(下降気味に)ならないように。腰も張ったりする時はありますけど、全然大丈夫なので」

 2020年のドラフト1位での入団。今季の位置付けを「他球団で主軸になっている選手もいる。今年、来年で活躍しないとやばいって、自分で焦らせています」と表現する。同級生では、中日の高橋宏斗投手が3月のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に選出。オリックスの山下舜平大投手は9勝を挙げて先発ローテーションの柱だ。3年目でも戦力になっている選手がいる以上、自分もそこを目指すのは当然だ。

「1年目、2年目の山下舜平大も見てきたので。あるきっかけで(いきなり)うまくなれるとも思ったりするので。『これだ』っていうものを、早く見つけられるようにしたいです」

 プロ野球選手なら自分の調子が悪くとも、前だけを見て結果につなげなければいけない。戦っている舞台はファームではあるものの、今の井上は、プロとして大切なものをつかもうとしている。

(竹村岳 / Gaku Takemura)