ソフトバンクは18日、敵地・甲子園球場での阪神戦に9-0で勝利した。先発のカーター・スチュワート・ジュニア投手が6回途中無失点と好投すると、両軍無得点で迎えた7回に牧原大成内野手、近藤健介外野手、代打の野村勇内野手の適時打などで一挙5得点を奪って試合を決めた。
この日で交流戦18試合を戦い終えたホークス。11勝7敗と4つの勝ち越しを作り、パ・リーグでも首位のオリックスに0.5ゲーム差と肉薄した。この戦いの中でも大きかったのが、シーズン序盤、不振に苦しんでいた近藤健介外野手の復調だろう。
日本ハムからFA権を行使し、今季からホークスに加入。打線の核として期待されていたものの、5月21日には今季ワーストの打率.232まで落ち込んでいた。だが、そこから徐々に上向き始め、この日を終えた時点で打率は.285に。わずか1か月足らずで5分以上、上昇させ、6月8日のDeNA戦から6試合で5本塁打と一発も量産した。
近藤復調の要因はどこにあるのだろうか。野球を科学的に読み解くセイバーメトリクスの指標を見ると、6月に入ってから急激に良化している数字がある。それは、相手投手の投じるストレートへの対応が明らかに変化していることが見えてくる。
セイバーメトリクスの指標などで分析を行う株式会社DELTA(https://1point02.jp/)のデータを参照すると、球種ごとの得点増減を示すピッチバリューの中でも、真っ直ぐの得点増減を示す「wFA」が急上昇している。5月上旬には2.3、5月28日時点で4.8だったが、そこから右肩上がりで6月17日時点では13.7になった。
5月の段階では近藤よりも高い「wFA」を記録している打者が多くいたが、そういった打者をごぼう抜きし、今では今季50打席以上立った全打者の中で最も高い「wFA」を叩き出している。データから見ると、明らかにストレートを捉えられるようになり、打撃の状態が上向いてきたことが見て取れる。
交流戦の最中、吉本亮打撃コーチも興味深い話をしていた。「もともとの姿になった感じですね。前半戦、ストレートで攻められることが多くて、それがファウルになっていることを気にしすぎたかなというところがあった。今は自分の間合い、形で打てているのでどんな球種が来ても捉えられている」。近藤復調の要因を問うた際の答えだった。
近藤が12球団屈指の好打者であることは周知の事実だ。もともと近藤は真っ直ぐに強い打者。2017年以降、すべてのシーズンでこの「wFA」は10を超え、2021年には20.0を叩き出してきた。他の球種のピッチバリューはシーズンを通じて、大きな変化はない。ストレートへの対応に苦戦した何らかの理由があるにせよ、そこに生じていた狂いを改善できたことが復調の要因と言えそうだ。
近藤は交流戦18試合で打率.413、5本塁打15打点、出塁率.519をマークした。2位の牧(DeNA)がまだ試合を残しているが、その結果如何では交流戦首位打者に輝く可能性は十分にある。完全復活を遂げた近藤健介。リーグ戦再開後も、打線に欠かせぬピースとして活躍してくれそうだ。