谷川原健太が「腹を括った」…2死満塁で“3球連続”の要求 ミス直後に思い浮かべた1年前の屈辱

スチュワートと谷川原健太【写真:栗木一考】
スチュワートと谷川原健太【写真:栗木一考】

2回2死満塁…執念が伝わってきた「3球連続スプリット」

「正直、めちゃくちゃ腹を括りました」。開幕カード3戦目、興奮が残る表情でそう語ったのは谷川原健太捕手だ。今季初のスタメンマスク。再三のピンチで見せたのは「逃げ」ではなく「攻め」の配球だった。ミスを犯した後も胸を張っていられたのは、1年前に味わった屈辱と、支えとなった「言葉」があったから。重圧を一身に背負った窮地で、脳裏に思い浮かんだのは――。

 29日に行われた日本ハム戦(みずほPayPayドーム)。ホークスにとっては3連勝を狙う一戦だった。カーター・スチュワート・ジュニア投手は5回3失点。強力打線を相手になんとか試合を作ると、8回までマスクを被り、チームを勝利に導いた。「真っすぐも強かったし、いい球を使うことを一番意識していました。一発がある打線ですけど、丁寧になりすぎても……とは思っていました」。

 谷川原の執念が伝わってきたのは、2回2死満塁の場面だ。打席に水谷を迎えると、初球から3球連続でスプリットを要求。バッテリーミスを怖がっていない、まさに「攻め」の配球だった。「ブロッキングでやってしまったので、カーターには申し訳ないです」。3球目がワイルドピッチとなり、逸らした白球をすぐに追いかける。痛恨のミスを喫し脳裏をよぎったのは、自分を救ってくれた細川亨バッテリーコーチの言葉だった。

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続きの内容は

谷川原健太が「めちゃくちゃ腹を括った」攻めの配球
後逸直後に脳裏をよぎった細川コーチの言葉
「行動が変わった」変貌を遂げた“対話の質”

2025年は開幕マスクもわずか11日で登録抹消

「あそこでもいい球を使っていこうと思っていました。ああいうピンチで変化球を要求できないようじゃダメですし、絶対に止める意識でした。技術的なところは練習するしかないんですけど、心の持ち方は去年とは全然違ったと思うので。去年だったらあのままズルズルといっていたかなと思います」

 2025年3月28日、谷川原は有原航平投手とバッテリーを組み、初の開幕マスクを託された。しかしチームが敗れると、わずか11日で登録抹消。2軍首脳陣の一員だった細川コーチに告げられたのは「試合中に反省するな」――。ミスしたとしても、時間は待ってくれない。試合が動いている限りは前を向き、次のプレーに全力を尽くす重要性を教わった。

 忘れられない苦い経験から1年。谷川原はスチュワートと向き合っている。暴投の直後、一瞬たりとも目線を下げなかったのは28歳の成長の証だ。「『やばいな』って思いましたよ。でも本当に『試合中に反省するな』という言葉が頭に浮かびましたし、もう逃げられないことはわかっているので」。4回にも2死一、三塁のピンチを迎えたが、ここでも初球からスプリットを要求した。悔しさを胸に刻み込んだからこそ、勇気を持って腹を括ることができる。

「去年の失敗がありますし、ベンチでも細川コーチから『切り替えていけよ』と。そう言われたので引きずらずにできたというか、前を向けたと思います」

スチュワートとベンチで言葉を交わす谷川原健太【写真:栗木一考】
スチュワートとベンチで言葉を交わす谷川原健太【写真:栗木一考】

細川亨コーチが変わった谷川原健太の変化と成長

「もちろん、成長してもらわないと困りますから。何かの意識を変えたから、それができる。タニ(谷川原)が頑張った証拠でしょう」。細川コーチはそう笑い、1年前と比較しながら谷川原の変化に目を細める。「2回を凌いで、ベンチに帰ってきた時に『次はちゃんと止めろよ』と言ったら『はい!』って。返事の感じもいつも通りだったし、もう大丈夫だなと思って見ていました」。頭を切り替え、前を向いていることは、その力強い返事から十分に伝わってきた。

 中でも細川コーチが評価したのは、スチュワートと細かく会話をする姿だ。投手に「ついていく」のではなく、意見を交わしながらともにピッチングを作り上げた。「タニは行動が変わってきましたね。ピッチャー1人で投げていたら絶対にボロが出る。上手く乗せてあげたり、時にはガツンと言うのも必要。去年とは違ったコミュニケーションができています」と細川コーチ。残り140試合、勝利のために最善を尽くす覚悟だ。

「1軍にいる限り、出場機会は絶対にある。海野(隆司)と切磋琢磨してほしいし、2軍にもいい選手はいますからね」。細川コーチが期待を寄せれば、谷川原も「練習するしかないです」と力を込める。試合後、しっかりと前を見据えて反省を口にする表情は、どこか清々しい。捕手として“怖さ”を知った背番号45は、一年前より何倍も頼もしくなった。

(竹村岳 / Gaku Takemura)