開幕戦V打の牧原大成…今宮健太が樹立した“金字塔”への思い 二塁は「誰にも渡さない」

決勝の犠飛を放つ牧原大成【写真:栗木一考】
決勝の犠飛を放つ牧原大成【写真:栗木一考】

「去年のタイトルはなかったもの」

 真価の問われる1年を最高の形でスタートした。最高のライバルとの手に汗握る接戦に終止符を打ったのは、昨季の首位打者、牧原大成内野手のバットだった。14年連続で開幕ショートスタメンというプロ野球新記録を樹立した今宮健太内野手と二遊間でコンビを組んだ33歳。明かしたのは強いプライドだった。

 27日、日本ハムとの開幕戦(みずほPayPayドーム)に「9番・二塁」でスタメン出場すると、6回2死二塁から一時勝ち越しとなる適時二塁打を放つ。さらに同点で迎えた8回1死一、三塁の好機では、右翼へ値千金の決勝犠飛。勝負どころでの勝負強さを発揮し、見事に開幕戦のヒーローに選ばれた。守っても8回に好守を披露。「ピッチャーも必死に投げてくれている。それを盛り立てるのは野手の仕事。自分でも納得のいくプレーだったと思います」と、攻守にわたる貢献でチームを勝利に導いた。

 昨シーズン、自身初のタイトルとなる首位打者とゴールデングラブ賞、さらにはベストナインにも輝いた背番号8。今春はWBC戦士として世界を相手にした。そんな男が、今季の胸に刻む思いとは何か。そして二遊間を組む盟友・今宮が打ち立てた“金字塔”への思いを語った。

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続きの内容は

盟友・今宮が樹立した「金字塔」に牧原が送った特別な言葉
昨季タイトルを獲っても「あぐらをかかない」と誓う強烈な危機感
開幕V打を呼んだ牧原大が毎日欠かさない「いつもの光景」とは

世界を見て気付いた「楽しむ」ことの重要性

「WBCで世界のトップレベルを目の当たりにして、自分たちが野球を楽しみ、思い切りプレーすることの大事さを痛感しました。失敗を恐れるより『楽しんでやろう』という気持ちの方が今は強いです」

 試合後、牧原大は清々しい表情で振り返った。この日もアーリーワークに参加し、誰よりも早く準備を整えた。全体練習が始まる頃には、中村晃内野手とキャッチボールを行うのが“いつもの光景”だ。前年の首位打者でありながら、この日の打順は9番。しかし、そこに気負いはない。

「打順は9番ですけど、巡り合わせによっては1番にもなるし、走者を還すポイントゲッターにもなる。状況に応じたバッティングを徹底するだけです」。その言葉通り、役割を完遂してみせた。

 特別な一日であっても、あえて「特別」を作らないのが牧原大の流儀だ。「普通の1試合です。開幕戦だからと変えることはない。昨日もいつも通り過ごしました」。オープン戦ではゴロが続く場面もあり、焦りがなかったわけではない。だが、「きょうの打撃練習で良い感じだった。自信を持って打席に入れました」と、ルーティンを貫いた中でチームに勝利を呼び込んだ。

ヒーローインタビューを受ける牧原大成【写真:栗木一考】
ヒーローインタビューを受ける牧原大成【写真:栗木一考】

盟友・今宮への敬意と、譲れない定位置

 そんな牧原大の隣で、今宮が「遊撃手として14年連続開幕スタメン」というプロ野球新記録を樹立した。背番号8にとっても、背中を追い続けてきた尊敬する存在。「それは本当にすごいこと。でも、何年かかっているからという特別な気持ちではないです。二遊間を組める限りはずっと一緒に組みたいっていう思いだけですね」。盟友への信頼を、牧原大らしい真っすぐな言葉で称えた。

 自主トレ期間中には、自らを厳しく律する言葉を口にしていた。「『タイトルを獲ったから』とあぐらをかいていたら、すぐにポジションを奪われる。プロ入りからずっと競争の連続だったから」。この日の試合後も、その視線は既に先を見据えていた。

「去年のタイトルとかも本当になかったものだと思ってるんで、また1からのスタートです。数字は1年間やってみないと分からない。誰にもセカンドを渡すことなく、1年間守り抜きたい」

 何事にも浮かれることなく、いつも通り準備し、いつも通りグラウンドへ向かう。大仕事を終えたその表情は、どこまでも自然体だった。

(飯田航平 / Kohei Iida)