廣瀬隆太が捨てた“雑念”…初の開幕1軍に明かした思い 正木智也と誓い合ったこと

廣瀬隆太【写真:竹村岳】
廣瀬隆太【写真:竹村岳】

ターニングポイントになった“親子ゲーム”

 待ち望んだ舞台への“切符”を掴み取った。「自分の中では『今は調子いいかな、ちょっといけそうかな』っていう感じはあります。凡打でも内容は悪くはないです」。オープン戦期間中にそう手応えを語っていたのが廣瀬隆太内野手だ。3年目を迎える今季、自身初となる開幕1軍をその手で手繰り寄せた。

 26日、NPBの公示に廣瀬の名前が記された。オープン戦では14試合に出場し、打率.278、1本塁打、2打点をマーク。若手野手による激しい開幕1軍争いから一歩抜け出した。この期間で転機として挙げたのが、“親子ゲーム”での1日だった。

「あの1本はやっぱり大きかったですね」。11日、ファームの広島戦で3安打を放つと、筑後からドームに移動して臨んだ巨人戦。代打で出場した8回に左翼へ豪快なアーチを描いた。タフなコンディションの中で放った一発こそ、首脳陣が期待していた姿だった。

「今年は本当にボールに集中して入れるようになった。そこは去年との違いだと思います」。そう語る背番号33。初めて開幕を1軍で迎える中での心境、そしてこれまでとは違った立場で迎える3年目への思いを明かした。

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続きの内容は

「ここで打たなきゃ2軍落ち」昨季の葛藤を断ち切った“意識のベクトル”1
守備も変化!廣瀬隆太の肉体を進化させた年末からの地道な特訓1
先輩・正木と誓った「結果を残したい」廣瀬隆太が語る“1軍定着”への決意

「去年はやっぱり自分の立場とかもあって、『ここで打たなきゃ2軍落ちだな』とか、少しネガティブなことを打席の中で考えたりすることもあったんです。だけど今年は、その打席に集中することができている。どういう立場であっても、目の前の1球に全力で向き合えているのはいいのかなと」

 語る口調は驚くほど淡々としている。昨季までは打席の中で迷いや雑念が生じることもあったが、今季は意識のベクトルを打席だけに向けられるようになったという。その結果、たとえ凡退したとしても納得感のある打席が増えている。小久保裕紀監督も「この(オープン戦の)後半、井上(朋也)との比較もあったんですけど。打席内容や結果を見ていると、全然廣瀬の方が上」と評価した。

地道なトレーニングがもたらした攻守の変化

 肉体の進化も、1軍の舞台へと押し上げた大きな要因だ。年末から取り組んでいるトレーニングを今も愚直に継続している。最新鋭の機器を用いて、正しい方向に力を伝えることを目的とする練習だ。ナイターの日であれば午前11時頃から汗を流した後にドームへ向かい、チームの休日であっても45分かけて必ずトレーニング施設に足を運んだ。

 その成果は打撃だけではなく、守備でも確かな感触として表れている。「バッティングは捻転差が違いますね。守備では腰が落ちやすくなりましたし、低い(姿勢の)まま動けます。骨盤の動きがよくなっていて、プレーしていても全然違うと感じます」。観客席からは見えにくい細かな変化だが、股関節に体重を乗せ、次の動作へ瞬時に移行するためのパワーが備わってきた。地道な継続が、ようやく体に馴染んできた証拠だ。

 それでも、背番号33は自身の立ち位置を冷静に見つめている。「今は(ジーター)ダウンズがいないけど、戻ってきたらどうなるかわからない」。怪我などによる主力の不在が自分にチャンスをもたらしただけだ、と謙虚に語る。だが、たとえその一面があったとしても、高き壁を自らの力で乗り越え、結果を残したことは紛れもなく廣瀬の実力に他ならない。

先輩・正木と語った「結果を残したい」

 1月の自主トレ期間では正木智也外野手と一緒に1軍で活躍することを誓い合った。「今年は結果を残したいですね」。そうこぼしたこともあった。まずはその思いを実現させるためのスタートラインに立った。

「今年は1軍に定着したいです。層が厚いんで、簡単なことではないんですけど。どこかのチャンスで一気にいきたいです。開幕して、もし1軍だったらそこからが勝負。スタートダッシュです」

 限られた枠の中での激しい競争。そこを勝ち抜き、ようやくこじ開けた狭き門。その先にある“1軍定着”という目標に向かって、今シーズンのスタートを切る。背番号33をどれだけ輝かせることができるか。昨季までとは違った1年が幕を開ける。

(飯田航平 / Kohei Iida)