取材激減、“露骨”に離れた人たち…野村勇が語る暗闇の2年間 プロの世界は「活躍せな何もない」

野村勇【写真:竹村岳】
野村勇【写真:竹村岳】

2025年にキャリアハイ…“引っ張りだこ”だったメディア出演

 選手の本音に迫る2026年の新連載「鷹フルnote」。野村勇内野手が2月に引き続き登場してくれました。取材がほとんどなくなった「空白の2年間」。背番号99は一体、何を思っていたのか。多忙な日々の「隙間」で守り続けたトレーニングのルーティン。飛躍を遂げた今、そのすべてを振り返る――。

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「活躍せな、何にもない。でもそれが普通なんですよね」

 苦笑いしながら放った一言に、プロ野球選手としての本音が詰まっていた。球団としては83年ぶりの「新人による2桁本塁打&2桁盗塁」という鮮烈なデビューから一転、“暗闇”を彷徨った2年間。野村が経験したのは、周囲の環境が「露骨に」変わるという非情な現実だった。

 2025年にキャリアハイとなる126試合に出場。12本塁打&18盗塁を記録するなど、攻守に欠かせない存在として日本一に貢献した。オフシーズンは、メディアから“引っ張りだこ”の状態に。その注目度には、取材を管理する西田哲朗広報も「川瀬(晃)と勇に対するオファーは、これまでに比べても倍以上じゃないですかね」と驚きを隠せずにいた。華々しいプロの世界で、スポットライトを浴びる喜びをあらためて噛み締めた。

 だが求められる喜びを知っているからこそ、かつての“静寂”が脳裏を離れない。カメラも、マイクも、自分を通り過ぎていった空白の2年間。野村が味わったプロとしての“リアル”――。その正体に迫る。

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続きの内容は

1年目に感じたプロの華々しさと、「露骨に」変わった2年間の現実
伴メンタルコーチと変えた「100%の集中」という基準
早朝4時からの“仕事”を終えた後…空白の日々に学んだ時間の重み

空白の2年間を経て…潔く受け止めたプロとしてのリアル

「1年目に活躍して、取材もテレビもちょくちょくありました。それが普通だと思っていたんです。『プロってすげえな、これが普通なんや』と思っていたんですけど。2年目に全然なくて『え、あれが普通じゃないん』って思いました。それでも、少ないけど何個かあって、3年目はほとんどなかったです。やっぱり『活躍せな何もないんやな』と思いましたね」

 1年目の2022年、彗星のごとく現れたルーキーは、一気に注目度を集めた。しかし、以降の2年間は1軍でわずか18安打。あっという間に周囲から人はいなくなり「露骨でしたね。すごかったですよ」と苦笑いする。この世界における厳しい“常識”を痛感させられた瞬間でもあった。

「でも、活躍していないのに(メディアに)出たくないじゃないですか。呼ばれても困るので、プロって“そういうもの”だと思うんですけどね」

 苦しんだ2年間、記事の見出しに複雑な感情を抱いたこともある。“書かれ方”に敏感となっていたのは、気持ちが内向的になっている証でもあった。「しゃべらないようにしているところは、確かにありましたね。そう考えると今はすごく幸せです」。乗り越えてきた苦悩がにじむ言葉。自身の成長はもちろん、前を向くきっかけをくれたのは伴元裕メンタルパフォーマンスコーチだった。

目の前のプレーに集中するきっかけをくれた伴コーチの存在

「まずは自分の中の基準を変えました。与えられた役割に100%で集中すること。代走なら1歩目のスタート、守備固めなら1球目……。その場その場で成功するために『こうしていこう』という話も伴さんとしながら、そこに向かってやっていく感じだったので。バシっとやることを決めたのが、今思うと大きかった気がします。(2年目、3年目の2年間は)ほんまに何もなかったので」

 2025年の活躍を経て、周囲の環境はまた一変した。出演依頼は“倍以上”届き、できる範囲で応えてきた。「『そんな活躍したっけ?』と思うくらい。自分が思っているよりもすごかったですね」。日本一に貢献したことを実感した一方で、2026年シーズンがより重要になることも理解している。多忙を極めた日々の中、わずかな“隙間時間”でも大切にしてきた。

 オフを過ごしていた12月のある日、午前4時起きで早朝番組に出演した。8時に収録を終えると、そのままみずほPayPayドームに向かった。眠い目を擦ることもなく、表情は充実感と活気に満ちている。「絶対にできないという時もあったんですけど、基本的にトレーニングは毎日やりたいので。いろんなことがありましたけど、しっかり継続はできたと思います」。何もかもを持て余してしまった“2年間”があったから、時間の重みを誰よりも知っている。今の野村に、妥協の2文字はどこにもない。

(竹村岳 / Gaku Takemura)