「成績が良くなったのは海ちゃんのおかげ」 上沢直之が明かしていた海野隆司への感謝と信頼

上沢直之とグータッチする海野隆司【写真:竹村岳】
上沢直之とグータッチする海野隆司【写真:竹村岳】

昨秋の日本シリーズ後…上沢直之が語った海野隆司への感謝

 オープン戦も佳境を迎え、ホークスの正捕手争いは熾烈を極めている。その中で一歩リードを広げつつあるのが、海野隆司捕手だ。実はその“予兆”は、昨秋の時点でエースの口から語られていた。「僕の成績が良くなっていったのは、海ちゃんのおかげなので」。“3.27”に先発する上沢直之投手が、明かしていた厚い信頼。海野が開幕マスクを託されるべき「必然」に迫った――。

 3月、1軍での競争は谷川原健太捕手、渡邉陸捕手との3人によって繰り広げられたと言っていいだろう。20日の広島戦(みずほPayPayドーム)は、上沢にとっても開幕1週間前のマウンド。海野とコンビを組み、最終調整を済ませた。背番号62も、競争の渦中にいたことは誰よりも理解している。「結果にこだわってやってきました」。2025年シーズンはチームトップの105試合に出場したが、年が明けた春も、隙を見せることなく存在感を示し続けた。

 パ・リーグ3連覇と、2年連続の日本一を目指す2026年。小久保裕紀監督が開幕投手を公表したのは、2月28日のことだった。そして時を遡ること、4か月。日本シリーズを制した後、上沢は海野へ感謝の思いを口にしていた。バッテリーを組んで知ったのは、相棒による徹底的な準備だった。

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エースが驚いた海野隆司の“準備の鬼”
キャリア上位と断言した鉄壁のブロッキング
信頼を胸に開幕マスクへ「1球もおろそかにしない」

「夏場以降に僕の成績が良くなっていったのは海ちゃんのおかげ」

「フォークボールだったり、低めに投げやすい環境を作ってくれたのが一番ですね。後ろにそらさないし、夏場以降にだんだんと僕の成績が良くなっていったのも海ちゃんのおかげかなと。ランナーが三塁にいようと、投げやすさがあったので。ブロッキングは(自分が組んできた捕手の中でも)相当、上位だと思います」

 落ちる変化球を操る右腕にとって、フォークはまさに生命線。必ず止めてくれるという思いがあったから、ピンチでも踏ん張ることができた。遠征地に向かう飛行機の中でも、相手チームの映像に目を凝らす海野の姿を何度も見てきた。「回数を重ねるたびに僕の傾向も掴んでくれたし、試合に入るまですごく勉強して入ってきているのが伝わってきました。だから基本的に海ちゃん任せでいけました」。間近で見た努力と準備が、右腕の中で“信頼”の2文字へと変わっていった。

 昨年の日本シリーズでは阪神と激突。佐藤輝明内野手らを擁する虎打線に対して、海野はチェンジアップが有効になると感じていた。初戦を落としてしまい、2戦目の試合前。先発の上沢も事前に相談されたという。「チェンジアップを使ってみたいんですよね」。目の前の1球だけでなく、シリーズ全体を支配するために。力を合わせたからこそ、頂上決戦の大切な1勝を手にすることができた。

「そこで『やりたいようにやろうよ』って話をしたのは覚えていますね。後で大津(亮介)が投げるところまで考えていたんじゃないですか。“その先”までつながるように、見せておきたかったんだと思いますよ」

 上沢は今季がプロ15年目。日本ハム、そして米国時代を含め数々の捕手とバッテリーを組んできた。「僕は意図を感じられる配球じゃないと、疑心暗鬼になることは多いですね。どういうボールで最後に打ち取りたいのか、過程の中でも見えないと首は振りづらいです」。最大限に意思疎通を図ったからこそ、チェンジアップは虎打線に対してこの上ない威力を発揮した。移籍1年目で何度も合わせた呼吸を、今季も開幕戦から見せつけてくれるはずだ。

上沢直之の賛辞にも淡々「そんなことないです」

 エースからの最大級の賛辞。しかし、その事実を伝えても海野の表情が緩むことはない。「そんなことはないです。自分は何もしていないので」。昨年8月以降、投手による暴投を1度も許していない。鉄壁のブロッキングは、同じく8月以降に6勝を挙げた上沢を大きく助けた。磨き上げた技術と準備が、背番号62の真髄――。淡々とした口調がまた、頼もしかった。

「準備するのは当然のことですから。根拠を持ってやらないと、ピッチャーもチームも納得しないので。そういう意味でやっています」

 プロ7年目の春、ライバルたちとの競争を経てさらにタフになった。開幕マスクを勝ち取れば、自身初となる。「この1か月は結果にこだわってやってきました。開幕は節目ではありますし、チームにとっても今年1発目の試合なので。1球もおろそかにしないよう、引っ張っていきたいです」。圧倒的な根拠を胸に、もう1度ホークスを頂点に導いてみせる。

(竹村岳 / Gaku Takemura)