村上泰斗が何度も繰り返した“開き直り” 19歳が受け止めた現実…「なんでそんなに自分に甘えているんだ?」

村上泰斗【写真:竹村岳】
村上泰斗【写真:竹村岳】

こぼした本音…「なんでやろう?」

 少し大人びた表情と、吹っ切れたような明るさ。1か月半前とは全く違う姿に思わず目を見張った。2024年のドラフト1位・村上泰斗投手はどのような心境で2年目の春を迎えているのか。取材中、19歳が何度も繰り返したのは「開き直るしかないです」という、決意に満ちた言葉だった。

 2月1日のキャンプイン。筑後のC組練習に現れた村上の背中は、心なしか丸まって見えた。下を向いて歩く姿に、声をかけることすらためらった。

 1月には大津亮介投手や木村光投手らとともに、オリックス・山岡泰輔投手の自主トレに“入門”した。高いレベルを肌で感じ、心身ともに充実した状態で春を迎えるはずだった。しかし、下されたのは“C組スタート”という評価。2年目の同期たちが宮崎キャンプへ向かう中、村上は筑後で練習を続けることになった。

「キャンプの最初の方はやっぱり悔しかったです。宮崎に行くことを目標にしていたので」。突きつけられたのは“シビアな立ち位置”だった。しかし、あの日に暗い表情を見せていた村上は今、「逆に今は楽しいです」と笑みを見せる。19歳はどのようにして前を向いたのか。

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続きの内容は

先輩が気づかせた村上投手の「甘え」
154キロを導いた“開き直り”の中身
大津ら先輩とのLINEで語られる「絆の言葉」

「評価として受け取るしかなかったです。『なんでやろう?』とも思いました。だけど、キャンプの途中から開き直りました。『今の自分はそういう評価なんだ、やるしかないんだ』って。もう上がっていくしかないので」

 誰かから優しい言葉をかけられたわけではない。2月20日に19歳になったばかりの若者は、逃げ場のない現実を真正面から受け止めることで答えを見つけ出した。「もう2年目。受け入れるしかない」――。現状を素直に認めたことで、霧は驚くほど晴れていった。

「迷うことが少なくなりました。もっとこうしないといけないのかなとか、今やっていることは正解なのかなって考えてしまっていました。でも今は、他のことをやっている場合じゃないなと思ったんです」

先輩たちの背中と、芽生えたハングリー精神

 迷いを断ち切るきっかけになったのが、オフをともにした先輩たちの存在だ。大津や木村光が口にする高い志。それに比べ、自らが掲げた「1軍初勝利」という目標が、あまりに小さく映ったという。

「見ている世界が違う人たちと過ごして、こんなに低い目標のやつが『なんでそんなに自分に甘えているんだ?』と思いました」1軍の舞台で戦う先輩の姿を見たことで、目標を語ることさえ恥ずかしくなった。それと同時に、甘えを痛感した日々が確かなハングリー精神を植え付けた。
 
 変化はすぐに現れた。3月15日に行われた3軍戦では、154キロをマーク。「1年前の自分だったらどうなっていたかなと考えると、今の状況は楽しいです」。立ち止まるのではなく、試行錯誤の過程すらも楽しむことができるようになった。

 そんな村上を、先輩たちも陰ながら気にかけている。筑後を訪れた大津からは「最近どうなん?」と気さくに声をかけられ、技術的な助言も受けた。自主トレメンバーのグループLINEでは、野球の話題から他愛のない日常の報告までが飛び交う。離れていても、繋がっている絆は何よりの支えだ。

19歳の覚悟…「上がっていくしかない」

「上がっていくしかない状況で今があるので。開き直ってやっていくしかないです」

 その言葉ににじむのは、やるべきことにただ没頭するという強い決意だ。「まだ1軍はシーズンが始まってもいない。自分の良い状態を見てもらえるようにしっかりやっていくだけです」。

 ドラフト1位という重圧を背負いながら19歳は前を向く。「前向きで良かった」と記者が声をかけると、「暗い気持ちは全然ないです。落ち込んでいる場合じゃない!」と清々しい笑顔が返ってきた。悔しさも、不甲斐なさもすべて飲み込んだ男は強い。何度も繰り返した「開き直るしかない」。その言葉を体現するたび、背番号20は一歩ずつ大人びていく。

(飯田航平 / Kohei Iida)